日常100 盗賊の流儀 ページ23
_よそ者には容赦はしないというな。
その言葉を聞き、元王様は目を見開いた。
慌てて自身の身の回りを確認する。この盗賊が言ってることが本当なら、よそ者である自分から何かしら盗っているはずだ。
それに…あの時手当てしてくれた少女は…
元王様がどんなに確認しても何一つ盗られた痕跡がない。
「俺は盗ってないさ。」
「何故だ?」
盗賊は悲しい目を隠すように笑顔で答えた。
「俺は足を洗ったのさ。」
_俺にはもう生きている理由がない。
この言葉は喉の奥に隠れた。
元王様は盗賊に隠れる哀愁を見て見ぬふりした。
「なぁ、街まで案内してくれないか?」
「…良いだろう。着いてきなよ。」
百聞は一見に如かず、この星の現状を見てもらった方が早いだろう。
盗賊は元王様の前を歩き、一言も話さず街まで案内した。
街につき歩いていると、街のはずれで騒がしい声がした。
「何じゃ!放せ!」
「獣も耳としっぽとは珍しい!こいつは高く売れるぞ!」
「わしはペットになどならん!」
少女が、盗賊集団に見つかり連れていかれそうになっていた。
周りの人間は自分たちの命が惜しく、下を向きながら足早に現場を通り過ぎ見て見ぬふりをする。
_よそ者には容赦はしないというな。
元王様は盗賊の言っていることが本当であることに胸を痛める。
_余の国ではどうだったか、余は王であるくせに何も知らない。
「放さんか!」
少女の悲痛の表情を見る。
_あの少女は余の手当てをしてくれた少女ではないか。
顔を見て思い出す。
そう言えばあの少女もこのような特殊な話し方をしていた。
余は助けてもらっておいて、無視することしか出来ぬのか?
元王様は頭を抱える。
盗賊はこれ以上ここにいては元王様も自分も巻き込まれる、そう思い元王様の腕を引く。
「おい、これ以上いたら目を付けられる。お前は派手だ。」
しかし、元王様は動かない。
_余は、変わるために星から国から罪から逃げてきたのだ。
_ここで動けなかった自分と別れを告げたい。
「おい!」
元王様は盗賊の腕を振り払い、騒ぎの渦中へ飛び込む。
その綺麗な剣を抜き、少女を掴んでいる男を切る。
「次は何じゃ!?」
元王様は混乱している少女の腕を無理やり引っ張り、走る。
その光景を見て盗賊はため息をついた。
_あの元王様は馬鹿だ。この街の地形も知らんくせに。
「おい!元王!こっちにこい!」
_俺が導くしかないじゃないか。
三人は街を逃げ回り、ついに盗賊集団から逃げ切った。
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大阪の女 - Stellaが良すぎましたありがとうございました (2023年3月29日 9時) (レス) @page29 id: f50a0ac3bb (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^)芋けんぴさんの作品楽しく見させていただいてます。話の続きも是非読ませていただきたいです。 (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^) (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - ねむさん» ねむ様、コメント及びご指摘をありがとうございます。完全なる打ち間違えです…。そのせいで寂雷さんが凄くネガティブな人になってました…。現在、訂正させていただいています。意味までご丁寧に教えていただき勉強になりました。改めてありがとうございました。 (2021年7月19日 15時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ(プロフ) - 日常107出発のmourningは悲嘆,哀悼 、哀悼の意を表すこと、喪服,喪章という意味(コピペ)ですよ。朝はmorningです。 (2021年7月19日 9時) (レス) id: 2b048548d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年8月3日 20時