日常98 彼らの自白 ページ21
辺りは炎に焼かれ、人々の悲痛な声が届く。
奇跡の到来などを信じ、この国を信じたせいで死んでいく悲劇の民たち。
余はそれを城から見ていることしかできなかった。
いっそ耳を塞いでしまいたかった。
彼らの悲痛な声が余の首を絞める。
_あぁ、余の国は戦いに負けたのだ。
しかし、余は王であるがために何もできなかった。
戦場に立つことすらも。
この無駄にでかい檻に閉じ込められ、何でもできるはずの余の手と足には大きな枷が。
__自由が欲しい。
__誰にも縛られたくない。
この願いは死に至る猛毒となり余を苦しめるかもしれない。
しかし、余は自由を求めて船に乗った。
燃料は少ないが、隣の水晶と砂の星までは何とか持つだろう。
ここにいても余は何者にもなれない。
何もできなかった自分に対する自責と後悔に灼かれながら星を追われることになるだろう。
だが、その方が幾分かましだ。
窓の向こうにはモノクロな世界と
_遠のく王座
しかし何故だろう。
どこか心が軽くなった自分もいる。
余は王という鎖から解放されたのだ。
今、余が生きている意味を求めて
船は水晶と砂野星へと向かった。
空には綺麗な流星が見えた。
_あぁ、退屈だ。
なぁ、友よ。何故死んでしまったのだ。
何故お前まで俺を置いていくのだ。
お前のいない世界など退屈でしかたがないよ。
友に笑って欲しくて、友と笑っていたくて
そんな願いすら盗賊の俺には叶わないのか。
俺のたった一人の友が先日殺された。
この世界に。
この世は権力が全てなのだ。
俺はこの世の全てを憎んだ。
もう生きている意味などない。
俺は空を仰ぐ。
_そこには憎たらしいほどに綺麗な流星が。
誰か、誰でも良いんだ。
__俺を殺してくれ。
そう思った数秒後
流星は大きな音と共にこの星に落ちた。
俺は振動に耐えることで精いっぱいだった。
だから気が付かなかったのだ。
その後にかすかに響いた船の着陸音に。
日常99 流星と船の着陸と出会い→←日常97 物語のプロローグ
525人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
大阪の女 - Stellaが良すぎましたありがとうございました (2023年3月29日 9時) (レス) @page29 id: f50a0ac3bb (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^)芋けんぴさんの作品楽しく見させていただいてます。話の続きも是非読ませていただきたいです。 (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽 - 初めまして。こんにちは(^^) (2022年10月12日 16時) (レス) @page50 id: 7d7f47de01 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - ねむさん» ねむ様、コメント及びご指摘をありがとうございます。完全なる打ち間違えです…。そのせいで寂雷さんが凄くネガティブな人になってました…。現在、訂正させていただいています。意味までご丁寧に教えていただき勉強になりました。改めてありがとうございました。 (2021年7月19日 15時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ(プロフ) - 日常107出発のmourningは悲嘆,哀悼 、哀悼の意を表すこと、喪服,喪章という意味(コピペ)ですよ。朝はmorningです。 (2021年7月19日 9時) (レス) id: 2b048548d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年8月3日 20時