日常73 正直者 ページ41
「り、理鶯さん。これは…」
「ん?あぁ、それは桜毛虫だな。」
「…毛虫ですか?」
「あぁ、そうだ。」
(おい、銃兎。あいつ様子が変だぞ。)
(え、えぇ、どうしたんでしょうか。)
少女は静かに容器を置いた後、一つ深呼吸して申し訳なさそうな顔で理鶯を見る。
「理鶯さん、私、毛虫だけはどうしてもダメで…」
「む、そうだったのか…」
「ごめんなさい。私、毛虫を見ると鳥肌が止まらないほどには毛虫が生理的に無理で…」
「知らなかった。嫌な思いをさせてすまなかったな。このスープは小官が飲もう。」
「…次は毛虫なしで作っていただけますか?」
「あぁ。約束しよう。」
少女は、無理をして食べるという選択ができないほどに毛虫が無理である。
そのことを隠すことなく、正直に理鶯に伝えるその勇気。
左馬刻と銃兎は今度こそ少女を尊敬した。
少女はスープ以外の料理を食べ進め、少女が思っていたより食べてくれたおかげで、サラダと揚げ物の量が減っていき、左馬刻と銃兎の負担が減った。
左馬刻と銃兎は、この少女がここまで食べれるとは良い意味で予想外だったため、助かった。
次からは食事に誘われたら、この少女も呼ぼうと珍しく二人の意見が一致した。
「ごちそうさまでした!」
「馳走様でした。」
「ごちそうさん…。」
「お粗末様だ。」
お腹いっぱいで幸せオーラを放つ少女と、ご飯を食べただけなのにゲッソリして疲れ切っている左馬刻と銃兎。
とても対称的である。
理鶯は少女の食べっぷりに満足し、周りにお花が咲いたようなオーラで片づけを始める。
「あ、理鶯さん手伝います。」
「そうか。ありがたい。では、小官が洗った食器を拭いてくれないか?」
「了解です。」
少女は理鶯についていき、食器を持って川へと移動した。
「あいつ、すげぇな。本当に女か?」
「本当です。Aさんのおかげで助かりました。」
左馬刻と銃兎は煙草に火をつけ少女と理鶯を見送った。
「理鶯さん、今日はありがとうございました。」
「あぁ、いつでも来るが良い。Aなら大歓迎だ。」
「えへへ。次は三郎も連れてきて良いですか?」
「勿論だ。待っている。」
「はい!」
片付けも終わり、少女は最後に理鶯とアメリカンな挨拶(ハグ)をして別れた。
帰りも左馬刻と銃兎の間を歩き、何事もなくイケブクロにたどり着いた。
「今日はありがとうございました。」
「またな。」
イケブクロ駅まで送ってもらい、少女は帰路についた。
「ただいま!」
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芋けんぴ(プロフ) - 讃良さん» ありがとうございます。私の妄想でニヤニヤしてくださるとは、嬉しいです!気持ち悪いだなんて滅相もない。嬉しい限りです。 (2020年8月2日 12時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
讃良 - こんにちは!すごく面白くて、終始ニヤニヤしながら読ませていただきました(どうか気持ち悪いとか思わないで!)。これからも全力で応援しております。頑張ってください。体調にだけ気をつけて! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 0970343196 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 神坂 チトセさん» ありがとうございます。私も、コメントの嬉しさにニヤニヤが止まりません。嬉しい限りです。 (2020年8月1日 23時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
神坂 チトセ - こんにちは、めっちゃ面白いです。ニヤニヤが止まりません(笑)無理の無い範囲でこれからも頑張って下さい(^ ^) (2020年8月1日 20時) (レス) id: 46099f0789 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - マチさん» ありがとうございます。嬉しい限りです。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年7月14日 22時