夜明けを灯す１２ ページ25
「おじさんが自分でカメラ向けたらしいんだけど下手くそで。結局同僚に撮りなおしてもらったらしいんだけど、おばさんはこれが一番好きなんだって」
松本の言葉を聞きながら、大野は神妙な顔で写真立てを手に取った。
「…この丘、夢と同じ場所だ」
「え？」
考え込むように顎に手を当てて険しい顔になった大野に、松本はついていけない。
大野は瞳を閉じて夢の風景を思い出そうとした。
泣くように藍色の空をこぼれる星
その中に佇むほっそりとした頼りない背中。
振り返り笑って微笑みを浮かべた彼女の胸には星が輝いていた。
儚くて、それでいて強い、燃え尽きる前精一杯輝こうとする星のようなそれは。
―――私結婚するの。
覚悟を決めたように強く煌めいたのは確かに決別だった。
だけど…
「…普通、これから新しい人と別の道を歩こうとする人が、最後にこんな思い入れのある場所なんて選ぶかな？」
…ネックレスまで大切に着けて。
何か大事なことを見落としているような気がする。
夢のその時が来るのは今夜。あまり時間がない。
ジャケットを手に取って走りだそうとした大野の腕を松本が掴んだ。
「なんだよ？夢って何？いきなりどうしたっていうんだよ」
驚いた顔で振り返った大野に、松本はすこし苛立って言う。
「あ…いや、ちょっと気になることがあって」
さりげなく松本の手を外そうとする大野に、松本は掴む手にさらに力を込めた。
松本の意志の強い瞳に貫かれて大野は戸惑った。
「よくわかんないけど、カズとおばさんに関係あるんだよな？だったら俺も行く」
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作者名：スイミー | 作成日時：2018年2月28日 11時
