夜明けを灯す１１ ページ24
「ニノの話、どこから聞いてた？」
チラリと大野を見ると、大野は優しく松本に笑いかけた。その目にごまかせないと踏んで、松本は不貞腐れたように答えた。
「…俺が寝起き悪いとか、大魔王が降臨するだの、そのクダリの少し前」
「なんだ。じゃあ最初から起きてたのか」
素直じゃないねえ、と眉を下げて苦笑した大野を睨む。
「起きるタイミング見失ったんだよ！」
聞いてしまった罪悪感とか、なんで俺に話せなくてこいつに話すんだとか、てかそんな知り合いだったのかよとか、諸々感情ごった煮で。
それを見透かしたような大人びた目で大野が微笑む。
「大丈夫。ニノも起きてるの気が付いてたみたいだし。
言ってたでしょ？潤君のことよろしくって。きっときみが胸を痛めてるって思ってのフォローだったんじゃないかな。心配すんなって。
それにね。他人のほうが話しやすいことってあるんだよ」
「…カズは、あんたのこと他人だなんて思ってないと思うけど。
真っ白な顔でぶっ倒れてるあんた抱えて、らしくないほど取り乱してた」
その言葉に目を見開いた大野は瞳を揺らすと「悪いことしたね」と呟いて目を伏せた。
その愁いを帯びた表情に、松本の胸がざわつく。
記憶のどこかが声を上げているような、そんな奇妙な感覚。
「それでさ、聞きたいことがあるんだけど」
その声に大野を見ると、真剣な目が松本を貫いた。
「なに？」
「ニノのお母さんてさ、星見るの好きだったの？」
散策じみた質問だと思ったのか、大野が少しすまなさそうな顔をする。
「好きだったんじゃない？
おじさんとは天体観測サークルとかで出会ったって言ってたし。おばさんはカズを妊娠した時大学やめされられたみたいだけど」
―――母さんが家族と折り合い悪いの、俺のせいだから。
いつか二宮がそう言っていたのを思い出して、松本の胸がズキリと痛む。
「おじさんが生きてた頃は三人でよく星見に行ったみたいだよ。
ほら、それそうじゃない？」
松本が指さした棚の上の写真立て。
星空をバックに三人が写っている。けどなぜかピンボケだし、おじさん顔は半分以上切れている。
けどおじさんもおばさんも、幼い二宮も笑っているのがわかる。
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作者名：スイミー | 作成日時：2018年2月28日 11時
