夢先のキンセンカ２ ars (ページ20)

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夜明けを灯す７ページ20

いつもあの人は小さな黄色の宝石のネックレスをつけてた。

父さんが母さんの誕生日にあげた、誕生石のトパーズ。

母さんの胸にあるそれは、光を反射して星みたいに輝いて見えた。

和也は父ちゃんによく似てるね。目がそっくり。

そう愛おしそうにしつこいほど言っていた言葉を、あの人はいつからか言わなくなった。

その代わり、俺を見る度どこか苦しそうな顔をして笑っていた。

それはちょうど、あの人が寝ている俺に「ごめん」と謝るようになった頃。

あの人がいつも”ひとり”に怯えていたことはわかっていた。

何も言われなくてもあの人が両親や兄弟と折り合いが悪くて疎遠になっていたことを理解できるくらいには、俺は大人になっていた。

「俺さ、そん時、

こんにちは、母さんの彼氏ですか？俺にお構いなくごゆっくり、って笑顔で言ったんだよね。

ふたりとも驚いた顔して、そんで次は気まずそうに顔見合わせてさ。俺どうすりゃいいの笑？」

なんとなく嫌な顔しちゃだめだって思った。

一緒にいられなくなるって。

ほとんど無意識にそう思って、自分の気持ちは隠すことにした。