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『で、出てけと…?』
「そうよ。家賃滞納、もう譲歩出来ないわよ!こっちがいくら待ったと思ってんの!!今すぐに!出ていってもらうんだから!!!!!」
ソン・A…人生最大のピンチです。
果たして、人生最大をここで使うのは正しいのだろうか。
私の人生にこれ以上のピンチは訪れるのだろうか。いや、そんなことは御免被るが、今の私にとってこの状況は紛れもなく人生最大のピンチというのに相応しいはずだ。
そうこうしている内に、大家さんが痺れを切らして荷物を外にぶん投げ始めた。
『ままま!待って!!!!!出ていきますからぁ!ああ!ちょっとそんな乱暴しないで〜〜〜!!』
そんなこんな、私は何故か既に最後まで記入済みの書類にサインをさせられ、強制的にアパートを追い出されてしまった。
どうしたものだろうか。
私はひとまず公園のベンチに荷物を下ろし、からりと晴れた空を眺め考える。
身よりはいないし、頼れる友人も…友人はいるが最近彼氏と同棲を始めたとかでとても頼めるものではない。
こうなったらバイト先に潜り込んで、寝床だけでも確保しようか。
いやいや、あの店長がそんなこと許してくれる訳がない。
……物は試しか。
『お願いします!!!!寝るところが無くて困ってるんです!暫くの間だけここを貸してください!!』
YG「駄目だ」
『タハッ…!』
やっぱ駄目か。
私の目の前で脚を組み、煙草の煙を燻らせるこの男はバイト先の店長であるミン・ユンギさんだ。
あいも変わらずやる気が煙と共に体内から抜け出ている様な男である。
『どうしても駄目ですか?』
私は普段使わない上目遣いなんかしてみちゃったりなんかしちゃったりして?
それなのに顔色一つ変えず、
YG「駄目だ」
絶望的な言葉を繰り返す。
『うわーーーーん!!!こんなか弱い女子を寒空の下放り出すなんて!大家も店長も極悪非道だぁぁあ!』
YG「知らないし、うるさいしうざい。大体、カフェで寝泊まりなんてできるわけねーだろ」
『ユンギさんがそこのソファで仮眠を摂るの何度も見かけましたけど』
YG「それは店長だから良いんだよ」
『職権濫用だ!!!雇われ店長のくせに!!!!!!』
YG「ああ!雇われでも店長は店長なんだよ!!!!悪かったな!!!!!」
なんて野郎だ。
こんな酷い人間だったなんて、私は悲しくなるよ。
大体、店長なら店長らしくもっと振る舞えっての。
あんないつもだらしなくシャツ開けた人の何処が店長なんだ。
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作者名:ヨバラズ | 作成日時:2023年4月6日 11時