緊急信号 ページ13
図書館にたどり着いたエーミールさんは、はたと足を止めた。首をかしげながら、開いたままの扉に触れる。
「なんで開いてるんや……?」
「どうかしましたか?」
「昨日施錠して、それから誰も鍵を持ち出してないはずなんやけど、なんでか開いてますね……」
エーミールさんの瞳が、ほんの少しだけ険しくなる。侵入者の可能性があるんだろうか。
「ちょっと中を見てきますので、ここで待っていてください」
瞳の険しさをおさめて、エーミールさんがにっこりしてくる。
私は先生に対する生徒の返事のように、頷きを返した。
図書館の中にエーミールさんの姿が消えていく。
電灯もまばらで、あたりは全体的に薄暗い。日没までまだあるはずだけど……。
ふと、また寒気を覚えた。
一人だ。
初めて来たよくわからない場所に、一人。
「――♪」
「……ん?」
なにか音が聞こえた気がして、音源の方を向く。
「――♪」
聞こえた。確かに聞こえた。
エーミールさんが消えていった図書館を見やる。耳を澄ます。
……物音もしなければ、エーミールさんの姿も見えない。
好奇心に負けて、私は音の方へゆっくり踏み出した。
「――♪」
導かれるようにたどり着いたのは、公衆電話だった。
忘れられたように、物陰にひっそりたたずんでいる。
街中ではもうほとんど見かけない。誰もが通信端末を持っている今、使われるときといったら災害時だろう。
つまり、もしかすると、かかってくる電話には緊急性がある。
話し手は、なんらかの緊急事態にある――?
「ジリリリリリリリリリリ」
「わっ!?」
けたたましい音を立てて、また着信が知らされる。
こんなの、ありえない。軍学校の公衆電話番号なんて、極秘も極秘だ。こんな無防備で、部外者がとれる場所にある公衆電話に、かかってくるわけがない。
手が、吸い寄せられる。
なにかの手がかりを掴もうと、私の意思を無視して体が動く。
「……はい」
電話をとる。
その瞬間、世界から音が消えた。
かわりに、
「よく来たね」
目の前に、“私”がいた。
今日の部活
豚をなでていたら書記長が「なでてる姿を見てるだけで癒されるわぁ」とニコニコしています。
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よぞら(プロフ) - まも。さん» コメントありがとうございます!文才だなんて恐縮です…(照)ですがそのようにお褒めいただけて嬉しいです!天使モードのtn氏のやわらか〜いほわ〜っとした感じを出したかったので嬉しいです…!引き続きお楽しみいただければ幸いです! (3月11日 13時) (レス) id: 5ed934123e (このIDを非表示/違反報告)
まも。 - 最初の「ふわ、と」で文才が開花しすぎて発狂しそうです。好きです。文才でバカボコ殴りつけられた気分です。好きです。陰ながら応援させてもらいます。 (3月10日 17時) (レス) @page1 id: b9c9a804fc (このIDを非表示/違反報告)
よぞら(プロフ) - なべるさん» コメントありがとうございます!万人受けはしないかも…と思っていたので、神だなんて言っていただき飛び上がるほど嬉しいです!!おそれ多いですが、引き続き更新がんばります! (12月9日 16時) (レス) id: 5ed934123e (このIDを非表示/違反報告)
なべる(プロフ) - 設定や文の書き方とか凄い好みでめっちゃ面白いです! 本当に神作品…もっと伸びてくれ… 更新頑張ってくださいね… (12月8日 20時) (レス) @page24 id: 41846b4a21 (このIDを非表示/違反報告)
yoakemae(プロフ) - 爛々炯々さん» コメントありがとうございます!なんと、初日からとは……!そのように言っていただきとても嬉しいです!!引き続き更新頑張ってまいります!! (10月27日 22時) (レス) id: 281ccc1f99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よぞら | 作成日時:2023年10月9日 21時