第二百二十五話【父と娘】 ページ38
────「まさか......こんなに早く再会できるなんてな」
その日私は安吾の案内により、管理人いや父の元に会いに来ていた。父は何も知らないように装うが私はその言葉を疑った。
「......お父さん。でも、こうなることも分かってたんでしょ？何でも知ってる人だっていうし」
全てを知る者。その異名があるからこそ、父はずっと異能特務課が管理下とするこの施設で過ごしてきた。私が知らない何十年も前から......
「まぁな、私の異能力は全智の能力......今まで起きた過去のこと、これから起こる未来を本の中に写し記録する者。その本を管理する者として管理人などと呼ばれているがな」
父は持っていた本を見つめた後、息を吐いた。
「秋田......いや......A......」
「Aで良いよ。慣れないなら、秋田でも良いからさ」
矢張り面と向かって話すとなるとまだ父も慣れないようだ。部屋に入った瞬間から緊張しているのが分かる。
「A一つ言っておく。もし......」
────「もしや態と彼女を放置したんですか？」
安吾は秋田を入り口まで送った後、一人部屋に残った管理人に声を掛けた。その言葉に管理人は口を開いた。
「いつかはこうなる筈だったんだ。だが、今は情報統制の上手い役人さんがいる。今のうちに手を打たないと引き継ぐ後が困るだろ？」
「あーなたって人は.....僕をそんなに寝不足にさせたいんですか？」
安吾は管理人の言葉に呆れるように答えた。
「私はただ誰もが向き合わなければいけない問題を引き合わせただけだ。その結果で良い方向に進んだのだ。今はそれで良いじゃないか」
「全ては貴方の計画通りということですか......」
「あまり私のことは信用するなよ。私がお前達に利用されているだけだと思うな。まぁ、今までの人生互いに利用し利用され続けていたのに......」
今まで誰かの命令に応じるままに自分の意思で行動することなどなかった。だが、今回初めて誰かの為に動くことを決めた。誰かの意思ではなく、紛れもない自分の意思で......そう思うと自然に言葉が吐き出される。
「今は実に気分が清々しい」
内心、安吾もこの男が感情のない人間のように思っていた。だが、それは間違いであったようだ。常識的には考えられない力を持つ人間ではなく、この男も父親としてただ娘の為に命を賭した人間の一人だった。
「ハァ......貴方がそんな風に笑うの初めて見ましたよ」
「ふん。何とでも言え」
第二百二十六話【過ぎゆく過去】→←第二百二十四話【失ってから気づくこと】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» コメントありがとうございます！無事に完結することができました。そう思っていただけたのなら私も嬉しいです。私も知っている作品がありましたらぜひ読ませていただきますね(^^) こちらこそ応援してくださりありがとうございました！ (2023年1月31日 15時) (
レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 完結おめでとうございます!!トキハルさんの書く文章を読んで私、漸く作者側に戻ってみようと思うことが出来ました。今度は私の作品を読んでいただけたらとても光栄です^^本当にお疲れ様でした!! (2023年1月31日 10時) (レス) @page40 id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» たくさんお待たせしてしまってすみません(┯_┯)ずっと待っていてくださりありがとうございました！ 後編もまた来週くらいには上げられるように仕上げていきますので、今もう少しお待ちしていただけるとお願いしますm(_ _)m (2023年1月28日 10時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 続編おめでとうございます!!そしておかえりなさいです！ずっとずっと待ってました^^戻ってきて下さっただけで嬉しいです!!更新応援してます!! (2023年1月28日 7時) (レス) id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トキハル | 作成日時：2023年1月26日 23時
