第二百二十一話【本当の】 ページ34
黒い霧が弾けるのと同時に、私の体は外に弾き出された。
「Aちゃん!」
太宰は秋田を抱えた。与謝野はすぐに秋田の容態を確認する。
「安心しな......生きてる。衰弱しているがすぐに病院に見て貰えば間に合う」
探偵社員達はすぐに秋田を救急搬送する為に取り掛かった。
「厄災は去ったようだ。私の役目は此れで終わりだ」
黒い霧がなくなったことを見届けた管理人はその場から立ち去ろうと歩き出したが......
「貴殿は、秋田 Aの本当の父君か?」
その行手を福沢が呼び止めた。
「私はある研究者の助手さ。父親などそんなものではない」
「いや、貴殿に隠れて調べさせて貰った。貴殿と秋田との関係性を。すると九十九%貴殿があの子の父親だとDNA鑑定がそれを証明した」
「勘のいい奴らだな」
「いや、ただ貴殿と秋田が似ていたからな。特にその目元は」
「フッ......そんなこと初めて言われたよ」
「直接会わないのか?これが......最後の機会になるのもしれないのだろ?」
「初めから顔を合わせるために来たのではない。ただ私の贖罪のためだけだ」
「贖罪......」
「元々生後一月内で生き別れた子供だ。私のことなど覚えている筈もない。あの子の記憶に私がいる必要がないのだ」
────「お、とう......さん」
今にも消え入りそうな小さな声。だが、その声だけは管理人の耳に届いていた。
「Aさん!」
秋田が目を覚ましたことに気づいた探偵社員は必死に声を掛けた。
「私......全部知ってるよ。『骸骨の舞跳』が教えて......くれたから」
「お父さんだって......私のことが心配だから......探しに来てくれたんでしょ」
「私は......」
「体に気をつけてね。長生き......してよね」
「......」
「さようなら。またもしいつか会えたら、私のこと抱きしめてね」
管理人は何も言わず再び歩き出した。探偵社員達は誰も引き留めずその姿を見送った。
────「満足しましたか?」
現場から少し遠く離れた場所で異能特務課の坂口 安吾は管理人に声を掛けた。
「あぁ......悪いな」
「これで貴方の脱走癖が無くなるなら願ったり叶ったりですよ。さぁ、戻りますよ」
管理人は一瞬、振り返ろうと立ち止まった。しかし、その考えを忘れさせるかのように歩き出し、側に停まっていた車の中に乗り込んだ。車は速度を上げて離れていく。それでも管理人の脳裏には秋田の姿がいつまでも焼き付いていた。
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トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» コメントありがとうございます!無事に完結することができました。そう思っていただけたのなら私も嬉しいです。私も知っている作品がありましたらぜひ読ませていただきますね(^^) こちらこそ応援してくださりありがとうございました! (2023年1月31日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 完結おめでとうございます!!トキハルさんの書く文章を読んで私、漸く作者側に戻ってみようと思うことが出来ました。今度は私の作品を読んでいただけたらとても光栄です^^本当にお疲れ様でした!! (2023年1月31日 10時) (レス) @page40 id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» たくさんお待たせしてしまってすみません(┯_┯)ずっと待っていてくださりありがとうございました! 後編もまた来週くらいには上げられるように仕上げていきますので、今もう少しお待ちしていただけるとお願いしますm(_ _)m (2023年1月28日 10時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 続編おめでとうございます!!そしておかえりなさいです!ずっとずっと待ってました^^戻ってきて下さっただけで嬉しいです!!更新応援してます!! (2023年1月28日 7時) (レス) id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2023年1月26日 23時