第百四話【紅血と風化】 ページ8
私は刀を構え、ジッと前を見据えていた。相手の異能力が物理攻撃か精神攻撃か......それとも未知の異能力か。どんな能力か分からない状況下では、体に緊張が走っていた。まるで生きた心地がしない。
不意に牧師の男が十字架のネックレスを取り出すと十字架の先端を自分の手に当てた。そして、先端で皮膚を傷つけた。傷つけられた皮膚からは血が滴った。
「行きますよ。お嬢さん」
牧師の手から紅い異能が使用された時に出る特有の光が見えた。 その瞬間、滴っていた血液が光を放って動き出し、前に向けて放たれた。私は急いで後ろに引き下がった。私が先程までいた地面には刃物で切られたような切れ込みが出来ていた。
牧師の異能力は血液を自由自在に操るものだ。血液を硬化させ、刃物のように扱う事ができる。それはポー トマフィアの芥川と似たような能力だ。
そう考えているうちに、再び血の刃が私を襲った。今度は避ける暇がない。私は小刀で血液を切り裂いた。
しかし、それが迂闊だった。
切られた血液が一瞬動きを止めたかと思うと、再び鋭い刃物を形成した。葡萄の蔓は切ればそのまま動きを止めたが、血液は違かった。血液は相手の一部だからだ。
"拙い......!"と思い、距離を取ろうとしたが、血液が私の肩を貫き、鋭い痛みが走った。体勢を戻そうとした瞬間、私の周りの空気が変わった。異変に気付いたのは地面の石が脆く崩れ去った時だった。同時に、鋭い何かが私を襲った。私は傷つきながらも、何とか後ろに下がった。状況が落ち着いた時には、私の体は切り傷だらけだった。
「貴方は何をしているのかしら。こんな小娘一人に手間取って」
日傘を差した女性が云った。
硬い石が崩れ去ったとみると彼女の能力は物体を風化させる能力だ。
私は目の前の二人を見た。この二人は厄介である。
なぜなら、遠距離攻撃を得意としているからだ。その反面、 私は近接攻撃を得意としているので相性が悪い。私は策を考える事よりも、上がった息を落ち着かせる事しか出来なかった。
────少し離れた所でスタインベックとラヴクラフトは三人が戦う様子を見ていた。
「うーん、僕じゃ相性悪いから......ねぇラヴクラフト。君も彼らを手伝ってあげてよ。僕もフォローするからさ」
「......眠いが......仕方が......ない......」
黒の外套を羽織った男性──ラヴクラフトは怠そうに答えた。そして、ラヴクラフトは前に歩みを進めた──
102人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時