第百四十三話【忘れていた言葉】 ページ46
「君とは会ったばかりだが、人生経験から忠告をしよう。君に人助けは向いていない。向いているのは──判るな?」
フィッツジェラルドはそう言い残すと、メルヴィルと共に白鯨へ乗り込んだ。二人が乗り込んだ事を確認した白鯨は、ゆっくりと上所すると、ステルスモードに切り替え、空の彼方へと消えっていた。
その場に残ったのは私と鏡花だけだった。そして、直ぐ近くで緊急車両のサイレンが聞こえていた。
「如何して?」
鏡花は白鯨が消えていった方向を見ながら呟いた。
「向いていないなら、如何して光を見せたの?如何して望みを抱かせたの?」
「手を掲(あ)げろ!連続殺人の容疑で逮捕する!」
そこに軍警の特殊部隊が私達の周りを取り囲み、銃を向けた。
「............」
鏡花はそれに抵抗する素振りを見せなかった。
「さようなら......もう私を......光で照らさないで......」
意識が暗くなる前、鏡花の悲痛な叫びが聞こえた。
「鏡花......ちゃん......敦君......」
手を伸ばしても何も掴めない。失う方がずっと早かった。結局、誰も救えなかった────
徐々に目の前が暗くなり、現実との境が見えなくなっていった。すると、今まで見てきた記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡った。敦が探偵社に入った時の事、ポートマフィアと衝突した事、鏡花と一緒に買い物に行った事、様々な記憶が乱反射した。
そして、砂嵐と共にいつかの夢に出てきた少女の記憶が現れた。それにより私はあの夢で彼女が言った言葉を思い出した。しかし、その内容を思い出さなければ良かったと振り払う事の出来ない後悔が私を覆った。
"────私が言えるのは力の使い時を間違えない事ね。そうしなければ貴方は────"
"この世界から消える"
それは私にとって残酷な言葉だった。
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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時