第百三十九話【背負う業】 ページ42
「この子は私の妹ですよ」
私は警官と鏡花の間に割って入った。
「妹......さん?」
警官は私と鏡花を見比べるように見た。
「はい。妹は知らない人と話すと緊張してしまうんです。だから、すみません」
「いや、だが......」
警官はまだ疑うように鏡花を見た。まだ目の前にいる少女が殺 人犯だと確定した訳ではない。しかし、少しでも疑いがあるのなら、此処で解放する訳にはいかないだろう。
「きっと気のせいですよ。妹がそんな事する筈がありません。今日は久しぶりのお出掛けだったのに......急に変な人達に襲われて、挙句には誰かもわからない殺 人犯に妹が似ていると......?そんな話があってたまりますか」
「わ、わかりました。しかし、その前に身分証か何かの提示は出来ますか?」
「私のならありますが......良いでしょうか?」
「はい。構いませんよ」
私は身分証を取り出そうと内ポケットに手を入れた。
「ですが、その前に......」
私は内ポケットから身分証を取り出す手を止め、目の前の警官を見た。私の様子に不思議がる警官を他所に私は小さく呟いた。
「【黒】」
その言葉の後、私の周りから黒い霧が現れた。黒い霧は真っ直ぐ目の前の警官の首に迫り、横へ切り払った。その瞬間、警官が意識を失ったかのように倒れた。
「け、警部!」
もう一人の警官が叫び、私に拳銃を向けた。
「警部に何をした!」
その問いに反応するように、私は警官の方を見た。
「事情は後でお話しします。ですから、今は見逃してください」
何時銃が発砲されてもおかしくない状況下で私は落ち着きながら言った。
「そんな話が通じると思うのか!?」
警官は強く銃を構え直した。その様子に私は唇を強く噛んだ。
「ごめんなさい......【黒】」
再び黒い霧が現れると、銃を構える警官に迫り寄った。そして、先程と同じように黒い霧が警官の首元で切り払われると警官は地面に倒れた。
"こちら本部。ゼロナナ何があった!応答しろ!"
急に現場と連絡が取れなくなった事で本部からの無線が騒がしくなった。
「直ぐに応援が来るよ。早く此処から離れないと......」
私は驚きのあまりその場に立ちすくむ敦と鏡花に言った。
「Aさん......」
敦が心配したように言った。
「大丈夫。殺 してはいないよ。気絶しているだけだから。それに、今捕まる訳にはいかないからね。さぁ、早く」
私達はその場を後にする様に走り出した。
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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時