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第百三十八話【自分の中に潜む何か】 ページ41

「鏡花ちゃんは如何して戻ったんだい?行方不明の儘でいれば戦争に巻き込まれずに済んだのに......」


敦の言葉に鏡花は立ち止まった。


「私の居場所は探偵社だけだから。生まれて初めて成りたいものが出来た。だから戦う。仮令(たとえ)、自分の中に潜む何を(・・)使っても」


その瞬間、私は尾崎の言葉を思い出した。


「────鏡花はじき、大勢殺 す」


鏡花にとって殺 しの才が生きる術だった。例え、不測の事態が起こっても、立ちはだかる者は全て消す。そうすれば、何もなかったように組織の命令を遂行出来た。


しかし、本当にそれで善いのだろうか......


確かに、マフィアに居た時にはそれが通じていたのかもしれない。しかし、仮にも今は探偵社の一員。探偵社は市民の為に力を振るうべき存在。殺 しとは無縁の組織だ。


もし......鏡花が再びマフィアにいた頃と同じように誰かを傷つけるなら、そうなる前に私がすべき事は......


彼女を止められるのは私だけ────






「済みません!」


その声に警官達が振り向いた。


「先刻そこで、武器を持った人達に襲われて......」


私達は警官に近づいた。


「何だって──大丈夫かい?非道い怪我じゃないか!」


「警部!」


「あぁ。裏社会の抗争かも知れん。暫く前から横浜は()うも(おか)しい。海外船の爆破、逃亡中の少女殺人犯......上の指揮系統も乱れがある。何が起こってる?」


ザザッ......ザザッ......


そこにパトカーの無線が入った。それに一人の警官が応答した。


「こちらゼロナナ。本部どうぞ」


"ザザッ......至急、至急......本部よりゼロナナ。手配中の連続殺 人犯がその近辺を逃亡中との情報あり。年齢は十四。和装で身長五尺足らずの少女。繰り返す......"


その無線に私は思わず肩をピクリと動かした。無線の殺 人犯とは鏡花の事だ。もしや......組合は私達が逃走する事を計算に入れ、更に真実の通報をした。そうすればもう私達に逃げ道はない。


無線の内容を聞いた警官が鏡花に目を向けた。無線の内容に合致する少女が目の前にいる。その事実が瞬く間に警官の中へ緊張を走らせた。


「お嬢ちゃん......年齢は?」


鏡花は警官の問いに答えず、目に暗い光を灯しながら、ジッ......と前を見ていた。


「......本部こちら────」


警官は無線に応答しながら、恐る恐る拳銃に手を掛けようとした────

第百三十九話【背負う業】→←第百三十七話【砕け散りし海辺に】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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