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第百二十五話【無事に送り届ける使命】 ページ29

私達が現場に着いた瞬間、ある一台の軽自動車に植物の枝が絡み付いていた。車体は枝に持ち上げられた事により宙に浮き、身動きができない状態だった。その枝の隙間から、車内に春野とナオミの姿があるのが見えた。


車の側には写真に写っていた組合の二人組の姿もあった。植物を操るスタインベックと体を異質な触手に変化をさせるラヴクラフトだ。彼等は車で逃げようとしていた春野とナオミを車体ごと捕らえていた。


だが、今なら助け出せる筈だ。私と国木田、谷崎は目で合図をすると、行動に移した。


第一に谷崎が異能力『細雪』で私達の姿を晦ませると、その間に国木田がラヴクラフトに向かって拳銃を撃った。私達の奇襲に気が付いたスタインベックが、自身に向かってくる銃弾を植物の枝で阻止した。


スタインベックの注意が此方に向いた事で、車体に絡み付いていた枝が力を失ったように捕縛を緩め、車が地上に下された。


「ナオミ!」


「春野さん! ナオミちゃん!」


谷崎と私の声に気がついた春野とナオミが私達に気がついた。


「兄様!Aさん!」


ナオミが助けが来る事を信じていたように顔を綻ばせた。


谷崎と私は車に近づくと、植物の枝を切って車のドアを開けた。


「五分後(ふもと)ふもとの鉄道を旅客列車が通る!十秒だけ、止まる様に話を通してある。それに飛び乗れ!」


谷崎がナオミに言うと、私に目を向けた。


「秋田さん。ナオミをお願いします」


「はい。必ず守ります」


「でも兄様を置いては......」


ナオミが不安な声を上げた。


既に攻勢「乙」である太宰と敦にはこの話は伝わっている。彼等は今、列車の進む先の駅に向かっている筈だ。私の役割は彼等と合流するまで、春野とナオミを無事に送り届ける事。そして、攻勢「甲」である国木田と谷崎もそうする事が願いであると託された。


私は春野とナオミに目を向けた。


「大丈夫です。彼等は強いですから。 さぁ、早く」


その声に促されるように、私達は茂みの中へと走りだした。

第百二十六話【眸ニ実レリ怒リノ葡萄】→←第百二十四話【危急存亡の秋】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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