幸せにしたいから【第五人格】

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とんとんと階段を降りて、食堂へと向かう。


そういやアイツ、飲み物は何がいいんだ？
慌てていたから聞きそびれた。



確か紅茶やコーヒーは、砂糖が無いと飲めないんだっけ。お子様舌だからな。


そんなことを思い出して、つい頬が緩んでしまう。

意外とAのやつ、甘いものとか好きだからな。ついでに菓子やらも持っていったら、どんな反応をするだろうか。


Aのことを考えながら歩いていると、あっと言う間に食堂へついた。

重たい扉に手をかけようとすると、ふと中から声が聞こえる。



「そういえばA、怪我したらしいけど大丈夫かな？」


この声は機械技師、トレイシーのものだろうか。


彼女の話題だと気づき、なぜか食堂に入ろうと出した手を止めてしまった。

すると立て続けに、問いかけの相手であろう空軍の声も聞こえる。


「きっと大丈夫よ。ほら、Aにはクラークさんがついているじゃない？」

「確かにそれもそうだね。イライさんとAは仲良しだからなぁ」

「二人とも、遠慮のない関係って感じでお似合いよね」



きゃあきゃあと盛り上がる二人の声が、嫌に心に突き刺さった。



そうだよな。あの二人はいつだって一緒だし、お互いのことを一番よく理解している。

今回のように、Aが傷つけば看病するのはいつだってクラークで

クラークが怪我をした時には、病室へ息を切らして走っているAも、何回も目撃したことがあった。


わかっている。
あの二人の間に、誰かが割って入る隙間なんてないということ。

誰が見たって、二人はお似合い。そう思うだろう。


だけどまだ、二人の関係が恋愛的なものだという話は耳にしたことがない。


だから俺は、その僅かな可能性を手放したくなくて。



もしAを幸せにしてやれるのが、クラークじゃなくて俺だったら、なんて。






言えない。






このままずっと、思い出を幸せのままにしておきたいから。

この想いは、まだ








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