【d!】ペットの人間ちゃん

賢い子 ページ1

私は賢いらしい。





…いや、「賢い」というよりも「他人をよく観察している」の方が適しているだろうか。




人をどうやったら怒らせないかとか、どうしたら機嫌が良くなるとか。




そんな事が人よりもわかるだけの、15歳と10ヶ月ちょっとの子供。





今日だって母と父はドア越しでも聞こえるくらいの声量で喧嘩をしている。


私がここに入ったらもっとうるさくなる。近所の方にまた謝りに行く事になる。だから私は仲裁役などしない。





…しかし、今日はいつもと喧嘩の内容が違うようだ。




怒鳴り声だった声はいつしかヒソヒソ声へ。



ヒソヒソ声だった物は、いつしか私欲溢れる汚い笑い声に。





２つの足音が徐々に私がいる部屋にゆっくり、ゆっくりと近づく気配がする。






父「…あぁ、ここにいたのかA」





久しぶりに親から名前を呼ばれた。


しかし、温かさなんて物は一切感じない。寧ろ、ゾッとする。






母「A、聞いて頂戴。今夜、私達とお出かけしましょう」






父の後ろから現れた母。前に見た時よりも痩せこけたように見える。


にこりと口角だけ上げた彼女はまるで欲を隠していない。








『…はい、わかりました。今から準備します』






笑みを貼り付けて言うと満足そうに笑った2人。



私は賢いのだから、怒らせない。

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