桃色わんこ

正解 ページ32

緑side

佐久間の姿が見えなくなっても俺はしばらくその場から動けなかった。
衝撃や悲しみを受け止め切れなくて何も考えられない。


俺はどうしたら良かったんだろう。

佐久間がすぐそこにいたのに、しっかり腕を掴んでいたのに何も出来なかった。





紫『もしもし、阿部ちゃん？』




縋るような気持ちでふっかに電話をかけた。

なんでふっかにかけたのかは分からないけど無意識でふっかにかけていた。



緑「ふっかっ…」


紫『阿部ちゃんどうしたの？泣いてる？』


緑「もう俺、分かんないやっ…」




俺の様子がおかしいのにすぐに気づいてふっかは今どこにいるか聞いてきて『すぐ行くから待ってて』とだけ言って電話を切った。




緑「佐久間っ...」




佐久間の幸せを望めばこのままアイドルを辞めるという佐久間の選択を優先すべきなのかな。

だけどやっぱり俺は佐久間に隣に居て欲しい。
これからも一緒にたくさん思い出を作っていきたいよ。




緑「ふっ…う...佐久間っ.....」




この涙はなんの涙なんだろう。

佐久間の気持ちを知ってショックで？
それとも何も出来なかった自分が悔しくて？




紫「阿部ちゃん！！」


緑「ふっか、なんで...」




いくらなんでも早すぎじゃない？
電話してからまだ全然経ってないよ？




紫「佐久間探しに近くに来てて」




それでこんなに早いんだ。

すぐに駆けつけてくれてよかった。
これ以上一人では居たくなかったから。




緑「俺ね、佐久間に会ったよ」




俺がそう言うとふっかは目を見開いて驚いた。




緑「佐久間のためを思えばこれ以上探したりしないでそっとしておいてあげた方がいいのかもしれない...」


紫「何言って...」


緑「佐久間ね、今すごく幸せなんだって」




佐久間が幸せだと言ったらふっかの顔が強ばった。




緑「佐久間が幸せなら、笑顔でいられるなら...俺はっ...」


紫「阿部ちゃん...」




佐久間、佐久間の幸せを一番に願えなくてごめんね。
佐久間はいつも俺の幸せを願っていてくれたのに。

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