三十二頁目 ページ35
朝食を平らげるとまた昨日のように皆で話し合いが始まった。
「…………この後、ゲームなんですよね」
珍しくイソップくんが真っ先に口を開く。
「そうだね。あっという間というか漸く、だった気もするけど」
私は4日だけで漸くか、と感じたが彼らは私以上に長い間ここで過ごしているはずだ。私が来るまではここの生活は楽しかったのだろうか。
「ここでの生活って楽しかったですか?」
「君が来るまでは……そこまで皆関わってなかったからなぁ」
「……ん?あぁ、そうなんですか」
どことなく眠気が私を誘い、応答に少しの間が生まれてしまった。
やはり緊張しすぎて昨日寝るのが遅くなったのが原因だろうか。
ゲーム前だというのにこんなにぼやぼやしていたらウィラさんに何か言われそうだ。
いっそ活でも入れて貰えればいいなと思い彼女を見やると、彼女は机の上に肘をつき顔を俯けていた。
「……ウィラさん?」
彼女に声をかけても返事は返ってこない。
代わりに聞こえたのは規則正しい呼吸音。
あの彼女がゲーム前だというのに寝ているなんて。
私への何らかの当てつけだろう。
そう思い、声をかけようとしたら隣からもゴツンと何かがぶつかる音がした。
「……ノートンさんまで、なんで……」
さっきまで話をしていた彼は机にヘルメットをぶつける形で眠ってしまっている。
そういえば先程から頭がぼんやりとしている。
イソップくんに視線を移すが彼も鞄を抱き抱えるように眠ってしまっている。
私以外の全員が眠りについていた。
「おかしい」その単語に辿り着くには余りにも遅かった。
目の前が霞みがかって、視界がなんだかふわりとして、周りの人や物が認識出来なくなっていく。
まるで舞台のワンシーンに一区切りをつけるように。舞台は暗転し、やがて幕が下された。
その暗転はフィナーレへ向けた幕間でも舞台転換でもない。
これが待ちに待った舞台の開演の合図である事を私達は知る由も無い。
The show is coming soon!
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野菜 - 感想ありがとうございます!こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください! (2019年6月27日 16時) (レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです!切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:野菜 | 作成日時:2019年6月22日 13時