球児達の恋模様【短編集】 (ページ10)

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◇ ※アニメ派の方、ネタバレ注意ページ10

※アニメ派の方、ネタバレ注意です。

　「大事な時期に、私のことで心配かけちゃいけないと思って。…でもごめんね、甲子園でソロやる約束破っちゃって」

　ぎゅっと口を結んで、泣いてしまいそうなのを堪える。そんなことで白州君はどうこう言う人じゃないとわかっている。…でも、私自身、甲子園という晴れ舞台で輝く白州君のことを唯一無二の役割で応援できる機会を失ってしまったことが悔しかったのだ。
　もちろん、助けたことに後悔はないし、私が支えに入ったことで軽くすんだと聞いて安堵した。…それでも私は。

　「…白州君のこと、甲子園で応援したかった。ソロパートやりたかった。」

　"こんなこと言われても困るよね、ごめんね"となんとか紡ぐが、いまだに白州君の方を見られずにいた。

　「…A、」

　やさしく私の名を呼んだ彼は、そっと背中に手を当てた。ゆっくりと落ち着かせるように、ぽんぽんとさすってくれている。…初めて触れられたその手から、服越しでも温もりが伝わってきた。

　「…まだ、夏があるだろ」

　そう声をかけてくれた彼に、ようやく私は顔をあげる。…目線がぱちりと合えば、彼は穏やかに笑っていた。

　「最後の夏、絶対に甲子園に行くから。その時はよろしく頼むな」
　「…！」

　優しくもあり、そして強く決意をもった瞳で、こちらを安心させるように笑ってくれた。…そうか、私が夏の甲子園に行くと信じないでどうするのか。彼らだったら絶対にまた甲子園に行けると信じなければ。

　「…だから、それまでゆっくり怪我、治せよ」
　「うん。…次は必ず。」

＊＊＊

_______…あれから数ヶ月後。

　「…やった、やった…！！」

　(白州君…！)

　空を切ったバット、そして吸い込まれるようにミットに治ったボール。___…そして、湧き上がる会場。

　マウンドに駆け寄る青い選手達は眩しく輝いていた。

＊

　「白州君…！！」

　___あの秋の日と同じ、夜の河川敷。

　最後の夏も甲子園行きを決めた彼に、頭より体が先に動いて、気づいたら抱きついていた。

　「…おめでとう、本当に…！」
　「あぁ。ありがとう。今年もまた何度も背中押されたよ。」

　抱き止めてくれた彼の腕は逞しく、これまで幾度となく戦ってきたのがわかる。…彼をずっと応援できたことを、心の底から嬉しく思う。

　「今年の夏は長くなるから、よろしくな」
　「うん。ずっと応援してる。」

____グラウンドを駆けるあなたへ、心をこめて応援を。