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「うぅ、クラスが離れるなんて…」
「まあ、仕方ないな」
始業式の日を迎え本格的に2年生が始まるが、張り出されたクラス表を見て私は項垂れていた。
「…これからも仲良くしてね、白州君…」
「クラスが離れただけだろ。そんなに落ち込むな」
「…こんな時にも冷静だね」
「別に、落ち込んでない訳じゃない」
「えっ」
あの電話以来、なんというか、白州君は以前より思っていることをストレートに伝えてくれるようになった。
嬉しいことではあるが少々心臓に悪い。熱くなった頬をバレないように覚ますことに必死である。
(…でも、嬉しいな)
別々の教室に向かう中、私の口角は上機嫌に上がっていた。
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(はやく、伝えたい…！！)
上機嫌で帰途につく私は、スマホを握りしめていた。…それは、どうしても早く伝えたいことがあって。
夕飯を済ませ、部屋に入る。スマホに表示されているのは、やはり"白州健二郎"の文字と、通話ボタンである。…今は、夕食が終わったころだろうか。…迷惑でないだろうか。
ごちゃごちゃ考えても仕方ないと意を決してボタンを押せば、数回のコールの後、"A？"と。
「…あ、白州君、今大丈夫？」
「ああ。珍しいな、どうした？」
彼の言う通り、メッセージはすれど通話はほとんどしないため少し心配な滲んだ声が伺える。そんな心配をよそに、通話のいつもより優しい声に口角が上がってしまうのがわかる。
「どうしても、伝えたいことがあって」
「え」
「…私、白州君のヒッティングマーチのトランペットソロ任されたの」
改まった声に少し戸惑いが浮かぶ彼をよそに、どうしても伝えたかったそれを報告する。白州君には及ばないが、私も頑張ってソロパートを貰えたのだ。
「…すごいな」
一息置いて、いつもの調子の声色でそれが返ってくる。大きなリアクションではないそれが、私にとっては心地良い。
「まだ2年生なのに…Aも相当頑張ったんだな」
「…それは白州君もね。…でも、うん。ちょっと頑張った。丁度トランペットのパートだったから。どうしても私がやりたかったの」
私の真の気持ちは、彼にとってはもしかしたら迷惑かもしれない。…でも、どうしても私は1番に彼を応援したかった。
「もっと頑張らないとな、俺も。…ありがとう。」
電話越しの彼が今どんな顔をしているかはわからない。でも、普段より少しやわらかな声に私は安堵した。
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作者名：やまなな | 作成日時：2024年2月29日 1時
