球児達の恋模様【短編集】 (ページ3)

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金丸信二＊見てる人は見ているページ3

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　賑やかな子とマイペースな子を今日も今日とてお世話している、金髪の男の子がいた。私はそんな楽しそうな光景をぼうっと見つめていた。

　同じクラスの金丸君は野球部のレギュラーだ。去年から同じクラスだが、別段仲が良いというわけではなく、何か用があればとか、席が近ければ話す程度だ。
　そんな彼の名を野球の試合で耳にするようになったのは、去年の秋のことだ。同じクラスの降谷君と沢村君が去年の夏から試合に出ていてすごいなあと思っていたところを、秋には金丸君まで出ていると知り驚いたのを覚えている。

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　____…ある日、沢村君が背番号1番を勝ち取ったとクラスの女子と盛り上がっていた。

　(…すごいなぁ)

　特に役職もなく、そして特段優秀な成績を収めるでもなく平凡に部活を過ごす私からすれば、彼はどうしようもなくまぶしく見えた。
　そんなふうにぼんやり見ていたのを、斜め後ろの席の金丸君に移してみる。彼も去年の秋、春のセンバツと主力のメンバーだったはずである。ふと気になり、"…ねぇ、金丸君、"と聞いてみることにする。

　「…A、どうした？」

　「沢村君、背番号1番になったみたいだけど。…金丸君はどうだったのかなーって思って」

　若干、恐る恐る問うてみれば、彼の表情はみるみる明るくなっていく。

　「おう、俺は5番だったぜ。…つってもわかんねぇか」

　「すごい！！」

　「は？」

　食い気味に反応してしまうと、彼は少し狼狽えていた。…いや、確かに驚かせてしまっただろう。でも、目を輝かせるほかなかったのだ。

　「だって、前は15番とかじゃなかった？5番ってことはサードのレギュラーってことだよね？主力ってことは知ってたけど、ほんとすごいなぁ」

　「お、おう」

　早口で捲し立ててしまい我に帰り謝ると、"いや、"と。

　「よく知ってんな、そんなこと。」

　「あ…ごめん気色悪かったら。…でも、私たちからすれば野球部の主力だなんてもはや有名人だもん。知ってる人は知ってるよ。」

　「…そっか。」

　そう言って顔を逸らしてしまった彼は少し黙ってしまったが、再びこちらを振り返ると、くしゃっと笑顔を見せた。すると、"見てる人は見てくれてるんだな"、と。

　爽やかなその笑顔は私の胸を高鳴らせた。…頑張っている人の笑顔ってなんて破壊力なんだろう。たかが私の言葉ひとつで、そんな喜んでくれるなんて、むしろこちらが嬉しくなってしまう。
　流れゆく暖かな空気が、とても心地よかった。