もう一度 ページ7
【総悟side】
"_____Aが、見回りに行ったきり戻ってこない。"
…それは、危うく己の冷静さを失わせかけた。
曰く、連絡も無いというのだ。
(…クソ、)
ここ最近、Aさんが例の一件で神経を削りながら対応していたのは知っていた。
…そのせいで、疲労と睡魔からふらふらしていたことも。
…座り込んでしまったAさんを抱き上げれば、気恥ずかしさからか少し赤くなったのも、諦めて礼を言うのも、___とろんと眠そうにする顔も。…全部、どうしようもないほど愛おしい。
"…そう、ご、"
アンタが自分の名を呼ぶだけで、胸が高鳴る。
"……す、"
…眠りに落ちる前に言いかけたその言葉は…、なんだったのか。…俺の都合のよい解釈をしてしまえば、アンタは…、
__…いや、そんなことはどうだっていい。
Aさんが誰を想っていようが、それを言い訳にするのはもう辞めてやる。
(…俺が、一番にアンタを守る)
守って、アンタの一番近くで支える人になってやる。
この件が落ち着いたら、絶対に言ってやる。
(…もう誰も、…アンタだけは死なせねェ)
…あの柔らかい笑顔を、照れくさそうに少し頬を赤くして笑うのを、いつも包み込んでくれるその温かなAさんを、もう一度見たい。…会いたい。
Aさんが強いだけの人じゃないのはもうわかっている。…あの人も弱音を吐き、倒れてしまうことだってある。
(……無事でいてくれ)
__愛する人のまだ息があることを、無事でいることを、願わずにはいられなかった。
「____これ、」
…と、1人の隊士が声を上げる。
「西野さんの警察手帳が!」
「…!!」
現在、Aさんの見回り担当区域を捜索中であった。
手掛かりを見つけるのにも苦労していたが、一筋の光が見えた。
「…こりゃ、Aさんがわざと置いていったんじゃねェか?」
すぐに発見した隊士が本部に構える土方さんに連絡を入れ、事態が動き出す。
…Aさんはおそらく、極限の状態の中、なんとかして事態を伝えようと警察手帳を置いてあったのではないか。
……つまりは自分はどこかへと拘束され、連行されたのだと伝えるために。
想定していた通りであった。…おそらく、例の組織に囚われたのであろうと。
…以前、奴らの懐に入れられたものを思い出す。
(…クソ、)
早く行かないと……いや、おそらくもしかしたら、もう…
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作者名:やまなな | 作成日時:2023年3月30日 18時