唯一無二 ページ5
【土方さんside】
_____何かが、おかしい。
…Aが、見回りに行ったきり帰ってこない。
たまに寄り道して帰りが遅くなることはよくある。
…だから、初めはそういうことだろうと気にせずにいた。
___…だが、見回り終了予定から何時間経っても帰ってこないのだ。しかも、全く連絡がつかない。
(…さすがに、何かあったとしか思えねェだろ)
夕方ごろ予定だったはずが、今はとうに日は沈み、20時を過ぎても帰ってこない。こりゃ、
(…例の組織か)
「…まずいな」
…以前、何か緊急事態があったら着信だけ入れる。無事ならばその旨を連絡する、という宣言をされた。
だが今は、連絡どころか着信すらない。
__つまりは、今Aはかなり差し迫った状況にある可能性がある。
(…クソ、)
すぐさま隊長格と監察を集めに走った。
*
「…落ち着いて聞け。
_____Aが、見回りに行ったきり戻ってこない。」
その言葉に、空気がピンと張り詰める。
…その表情には、心配と焦りとが滲んでおり。
「例の攘夷浪士の組織による可能性がある」
極めて冷静に話を進めれば、皆も同様、真剣な表情へと変わっていた。
___ちらりとそいつ…総悟を見ると、今までにないほど冷静に…真剣に、こちらの言葉を待っていた。
…その様子に、こいつらにおけるAの存在の程度が伺えた。
(…いや、それは俺も同じか)
アイツのもたらす安定感と安心感は唯一無二である。
仕事も速い、周りはよく見られる、気を遣える……どこをとっても非の打ち所がねェ。
…そんなアイツに、随分と支えられてきた。
今までも組織の内情を探ったり拠点を探したりするのに敵地へ潜り込みに行くことはあった。
…が、今回に関しては今までのように事前に作戦を立ててきたようなものではなく、Aからの情報は全くない。
「…早急に、Aを追うぞ」
隊士達の前で淑やかに笑うアイツが脳裏に浮かぶ。
歳こそ違えど、優秀な右腕であり、部下である。
___それにAは、沖田兄弟にとって大切な…
仲睦まじく笑い合うアイツらが思い起こされる。
(…感傷に浸ってる場合じゃねェな)
ふと過去に片足を掴まれそうになったところを、なんとか思い留まる。
___攘夷浪士も叩いて、Aも連れ帰る。…ただ、それだけでいい。
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作者名:やまなな | 作成日時:2023年3月30日 18時