【銀魂】仲良くなりたい人【斉藤終】

作戦、成功 ページ36

【桜井Aside】



(＿＿＿…なかなか、現れないな)



作戦開始から数十分、攘夷浪士らしき人は現れない。

……まあ、そんなにうまくいくならばすでに捕まえられているだろう。


『………ふぅ、』


神経をすり減らしながら数十分も歩いているものだから、少しばかり疲れてきてしまった。


そのへんの壁に寄りかかり、ひとつ息を吐いた。




＿＿＿＿＿＿と。



「…………なぁ、アンタ」



…一人の男の声と、複数人の足音。


(……来たか)


ゆっくりと振り返ると。


「こんなところで女一人たァ、………ここがどんなところか、知らねェのかい」


なんて、ニヤニヤこちらを見てくる男が立っていた。


『………どちら様でしょうか。』

「…さァ」



あまりにも受け身だと疑われてしまうかと思い、その場から立ち去ろうとすると。



「……まぁ待てよ、ちょっとくらい楽しいことしてから帰ってもいいんじゃねぇか」



…男は私の腕をがっちり掴んで引き留めた。


『………楽しいこと？』


…次の瞬間。


『………！？』


一気に腕を引き寄せられ、男の唇を、私のそれに重ねられた。


「……こういうこと、とか？」


男は目の前で、ニヤリと笑った。………私が接吻されたことは、すぐに理解した。



(………意外と、冷静になれるもんだな)


…仕事だからだろうか。…アドレナリンでも出ているのだろうか。


(この人たちは、追っている攘夷浪士なのだろうか。)


酔っぱらっているようには見えない。酔った男がナンパかましているわけではなさそうだ。



(………黒か？)


私はばれないように真選組へ合図をし、か弱い女を演じることにする。



…ひとまず男の胸板を手で押し返しながら


『……っなに、するんですか、』


なんて、泣き出しそうな声を出しつつ、


『やめて、ください…』


などと言い、男たちの顔を見上げた。たっぷり目に涙をためながら。




「………コイツは良いな、………連れてくぞ」

「了解」

『きゃ、ちょっと、やめてください！！』

「うるせぇな、黙ってろ」

『……んんっ』



男たちに両腕を抱えられ、さらに口を塞がれた。私はそのまま車に乗せられた。



(……囮作戦、成功)



表面上、怯えたような苦しい顔をしていたが、……心の中で、ニヤリと笑った。




(女って、こうやって武器をつかえるのか。)


やけに冷静になれたのはどうしてだったのか、このときの私は知る由もない。

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