【銀魂】仲良くなりたい人【斉藤終】

気づかないように、した？ ページ25

【桜井Aside】



＊


現在、着物を試着するため、店の奥の部屋にいる。


…その紺の地に綺麗な花の模様があしらわれた着物は、隊長がずっと見ていたものらしい。


(隊長は、私に似合うと思ってくれてたのかな…)



…たまたま見ていただけかもしれないけれど。でも。



(そうだとしたら、嬉しいなあ)



無意識にも口角が上がっていたことを、目の前の姿見を見て気づいた。

…というのを、店員さんも気づいたのか。



「あの人、あなたの"好い人"かい？」


なんてことを言われたのだ。


『え、ち、違いますよ！！』

「そうなのかい？随分とその着物を見ていたからねぇ。よっぽどあなたに似合うと思ったんだろ。あなたがその着物を"綺麗"って笑ったとき、あの人、すごく嬉しそうに見えたし。


…こんなに綺麗な着物が似合うって思うなんて、あなたのこと好いてるんじゃないかって思ったのよ。」



…顔が、熱くなった。


(す、好いている…！？)


いや、嫌われてはいないんだろう、という自信はある。最近は。

…ただ。


店員さんが言うような、"好いている"＿＿いわゆる、恋愛感情となると、また話が違ってくるだろう。


…おそらく、部下として、仲間として。そんな分野では、私のことを、これからも好いていてくれるんじゃないか、とは思う。


しかし。

おそらく、隊長は私のことは"恋愛対象"には入らないのであろう。


他の隊士曰く、私といると楽しそうに見えるそうだが、それは、今までそんな話しかけてくる人がいなかったから、それが新鮮で、楽しそうに見えた、ということなのだと思う。



…と、考えると。





＿＿＿ズキ…と。


少しだけ、胸が痛んだ。



紛らわすように、ふっと笑って。



『あの人は、…私の、ちょっと口下手で無口な、…でも尊敬している、そんな上司です。』

「…そうかい。」


ご年配のその女性の店員は、なにか私のことを見透かしたように、優しく微笑んだ。



「私は、あなたたちお似合いだと思うけどねぇ。」

『…ありがとう、ございます。』

「さ、その着物、あなた綺麗だし、きっと似合うはずよ。着て、その上司さんとやらに見せてあげましょう。」








どんな反応されるかな、なんて、胸が高鳴って。


嬉しかったり、胸が痛んだり。



…この感情が、あの人だけに向いていることとか。

その感情は、なんと呼ぶのか、とか。




……この時は、気づかなかった。＿いや、無意識に"気づかないようにしていた"、のかも。

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