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帰り際 ページ25

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「……それって、大丈夫なんですか?」

「小生は構いませんが出版社的にはグレーゾーンと言ったところでしょうか」

 ふふ、といたずらっ子のように夢野先生は笑った。

(それを私が読んで、感じたことを交えつつ彼と意見を合わせ、絵を仕上げてほしいという事か)

 そこまですれば完璧だ。完全に解釈一致の本が仕上がる事だろう。先程「良心が痛むから行動しない」という旨の温厚な意見を言っていたが、内心は思い切りの良すぎた行動を取ってしまうほど気持ちが揺れていたのかもしれない。

「……分かりました。読みましょう」

 読んで、完璧な結果を残してみせる。ソラナミとしての役割を全うする為、AAが嫌悪する人付き合いをしよう───私が壊れてしまわない程度に。



「遅くまで話に付き合わせてしまってすみません。送りますよ」

「え……?申し訳ないので大丈夫ですよ」

「ですが……最近治安が悪くなっていると聞きましたし」

 私がさっき口走ったことを思い出す。数年前は東京と呼ばれていたこの地域一帯の治安が悪いのは周知の事実だが、ディビジョンラップバトルが近づいていることで高揚感が充満しているのか、最近は治安の悪さに磨きがかかっていると噂されている。昼間だからといっても裏道を一人で通ることは避けたいレベルなのだ。夜間にひっそりとした住宅街を歩くのが危ないなんてのは当たり前である。
 住所が割れるのは少し怖いが私も彼についての様々な事を知ってしまった。情報は物々交換できるものではないけれどそれぐらい知られても良いだろう。

「それでは……お願いします。私もまだ死にたくないですから」

「はい、任されました。(それがし)は柔道を習っていた故、不審者の一人や二人なんてどうって事ないのでね」

「へぇ、意外です」

「まぁ嘘ですけどね」

 ……でしょうね、とにこやかな青年を見て内心思う。人を見た目で判断するのは悪い事だが、彼がそんな過去を持っている様には残念ながら見えなかった。まだ「持病で通院暮らしでした」という嘘の方が信憑性があるというものだ。



「あっ!ちょっと待ってよ〜!」

 表の通りへ出るために歩みを進めようとすると後ろから明るくて高い声が私たちを呼び止めた。私たちはその声の方へゆるりと振り向く。

 今の今まで隣部屋で作業をしていたピンク色の青年───飴村さんがガラス戸を開けて追いかけてきていた。

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有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - こんにちは。更新停止は悲しいですが、今までの中で凄く謎があり、魅力的なストーリーをありがとうございます!もしまた夢小説を書ける機会があればその時は必ず読みます!ボードも読ませて頂いていました!勉強等、頑張って下さい!執筆が再開出来るのを待っています! (2021年1月18日 18時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)
GH(プロフ) - 有栖 幻月@ポッセ同盟さん» 読んでくださっている方がいると分かって嬉しいです…!ありがとうございます〜! (2021年1月5日 13時) (レス) id: a35742dc57 (このIDを非表示/違反報告)
有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰っています。所々に謎があるストーリーがとても好きです。これからも頑張って下さい! (2021年1月5日 11時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:GH | 作成日時:2020年11月3日 10時

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