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嘘つきの文豪 ページ18

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「では『メインの理由』とは何ですか?」

「別にそこまで深い理由ではないですけどねぇ」

 私、飴村さん、有栖川さんの三人の注目が和服の青年に集まり彼の次の言葉を待つ。答えようによっては依頼を断ることもやぶさかでない。

「理由一、仕事の話を路上で立ち話するのはどうかと思った。理由二、この時間に新しく店に入るのも気が引けたので乱数の事務所を借りられたら良いと思った」

 何の変哲もない理由でしょう?と彼は言った。

「……本当に普通の理由ですね」

「……だな。なんつーか、拍子抜けっつーか」

 奇遇にも有栖川さんと同意見だったようだ。どんな料理かと思って蓋を開けたのに、中身は給食のようにバランスの取れた料理だったというような感覚。珍味だらけよりも食べ慣れた食材だらけの方が安心するのに、それはそれで面白みがないというような変な感覚。

 目的と手段が逆になるとはよく聞くが……この場合、目的と手段と結果が全てごちゃごちゃになったという事だろうか。いや、違うな? 私が想定していた目的、手段、結果と夢野先生が想定していた目的、手段、結果が違っていたということ?
 ……それも違うな?ラップを披露することは飴村さんの発案であって夢野先生の発案ではないはずだ。つまり外部要因による変化と嘘による思考の歪曲で演算していた解答とは別に───無理無理。考えても無駄。

 結局信じられるのは自分だけなのだから他人についてアレコレ考えるのはお門違いってものだろう。当初の「私の目的」を忘れるな。私は夢野幻太郎という人物と依頼に関する話ができればそれでいいのだ。

「まぁまぁ。結果良ければ全て良し……と言うでしょう? 話し合いの場を借りられた上に相互理解ができたのですから万々歳ですよ」

「ま、それもそうだな。ラップの練習にもなったし俺は別に不満はねぇよ」

 嘘をつかれたことに少しでも腹が立たなかったと言うとそれこそ嘘になるが、基本的に目的の利害は一致している。私には反対する理由がない。

「そういや乱数、ここを話し合いの場にするってのは許可したのか?」

 ふと、有栖川さんがずっと黙っているピンクの青年に声をかけた。たしかに、電話では意思疎通ができていなかったように聞こえたのだが……

「───あ、僕?えっとねぇ……僕は幻太郎が遊びに来てくれたってコトだけで嬉しいからね!どんどん話し合いの場に使っていーよっ!」

賭ける人→←Q.E.D……?



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有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - こんにちは。更新停止は悲しいですが、今までの中で凄く謎があり、魅力的なストーリーをありがとうございます!もしまた夢小説を書ける機会があればその時は必ず読みます!ボードも読ませて頂いていました!勉強等、頑張って下さい!執筆が再開出来るのを待っています! (2021年1月18日 18時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)
GH(プロフ) - 有栖 幻月@ポッセ同盟さん» 読んでくださっている方がいると分かって嬉しいです…!ありがとうございます〜! (2021年1月5日 13時) (レス) id: a35742dc57 (このIDを非表示/違反報告)
有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰っています。所々に謎があるストーリーがとても好きです。これからも頑張って下さい! (2021年1月5日 11時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:GH | 作成日時:2020年11月3日 10時

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