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自問自答 ページ13

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 イケブクロとは違う雰囲気を感じるシブヤの街。青年は約束通りに、日が暮れようとも賑やかな通りを選んで歩みを進めていく。たまに振り向いて私が着いてきているのか確認しているようで、私は見つかりやすいようにと数メートル程度の距離感を保って彼を追った。

(何やってるんだろう、私)

 青年の背を眺めながらぼんやりと思いにふける。
 AAが他人を信頼していないのは変わりない。他人と極力関わりたくないという思いは変わっていない。その証拠に、私は彼と対面してからもあること(﹅﹅﹅﹅)を避けている。

(……ソラナミとしての合理的な選択だ)

 例のメールが本人からのものなのか確認できれば安心だ。先払いを受諾されたとはいえ、せっかく描きあげた絵が使われなかったなんてことになるとやるせない。この業界ではわりとよくある事で、例えば、リリース予定のソシャゲが企画倒れしたというのはよく見かける事例だと思われる。
 よくあるとはいえ体験したいはずもないのでこちら(絵描き)としては避けたい事であるのは自明の理だろう。どこの馬の骨か分からないような依頼人より明確に分かる依頼人の方が信用できる。

(そうだ。信頼(﹅﹅)信用(﹅﹅)は違うものだ)

 うん、と一人頷く。信頼なんて持ち合わせていないしするつもりはない。けれど仕事において信用というのは大切なものだ。だから私はその信用を交換するためにこのような行動に出た───そういう事で良いだろう。

(でも、何度もメールのやりとりをすれば?出版社情報を聞き出して自分で調べていれば?)

 ───それで十分だったのでは?
 冷や汗が頬を伝う。こんな事をする必要なんてなかった?虚実を鮮明にさせる手段は他にもあったたのでは……いや、絶対にある。送信元メールアドレスだってもっと調べれば割り出せたかもしれない。
 Aの嫌悪する事を無理にしたのが原因で気が焦っていたのか?……分からない。自分のことなのに私には何も分からない。

「着きましたよ」

 ぐちゃぐちゃになった脳内に異物質が入り込む。顔を上げて間近の建物を視認した。
 内側からの光が漏れている、 ビビッドカラーに包まれたテナント。外のベンチらしき所にはマネキンのようでマネキンではない人形が足を組んで腰掛けており、右端の壁には「POSSE」の文字が描かれている。

「どうぞこちらへ」

 青年の後に続いて、私は境界を踏み越えた。

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有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - こんにちは。更新停止は悲しいですが、今までの中で凄く謎があり、魅力的なストーリーをありがとうございます!もしまた夢小説を書ける機会があればその時は必ず読みます!ボードも読ませて頂いていました!勉強等、頑張って下さい!執筆が再開出来るのを待っています! (2021年1月18日 18時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)
GH(プロフ) - 有栖 幻月@ポッセ同盟さん» 読んでくださっている方がいると分かって嬉しいです…!ありがとうございます〜! (2021年1月5日 13時) (レス) id: a35742dc57 (このIDを非表示/違反報告)
有栖 幻月@ポッセ同盟(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰っています。所々に謎があるストーリーがとても好きです。これからも頑張って下さい! (2021年1月5日 11時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:GH | 作成日時:2020年11月3日 10時

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