コイノウタ (ページ50)

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あかずして別るる涙滝にそふページ50

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「描けん」

「描け」

大っ嫌いな美術。

「早く帰りたい」

「なら描き」

でも、先生のことは好き。

「Aのせいでこの後のデートキャンセルや」

「先生がこんな課題出すからやん」

整った顔立ち、小さな変化にも気付いて優しい。男女から人気の清水先生だけど…

「しけこもう思ったのに」

私の前だけかは知らんけど、平気で女の話をする。

「たまには遊ばずゆずる先生みたいに生徒に優しくしろってことですよ、せんせ」

「Aはもうちょい大人しくした方がいいんちゃう？せっかくの可愛い顔とそのスタイルが勿体無いわ」

「ひっどーい！パワハラ！モラハラ！セクハラ！」

「ふは、口くらい手も動かせば早よ帰れるで」

夕陽が射す美術室でやいやい言いながら過ごすこの時間が大好きだった。

「あーフラれた」

昼休み、廊下ですれ違った時に件の彼女との行く末を聞いた。

「え、、ごめんなさい」

「Aのせいちゃうよ、俺も悪いとこあったし」

女には苦労せんし。生徒にそんな発言しちゃうとこさえも好きだった。

「Aも卒業かー」

「早かったなぁ」

「何日ここに来たんやろうな」

「先生が意地悪な課題出すから！」

私は秋に就職先が決まって、することのない自由登校。ふら〜っと遊びに来て図書館で本を読んだり、教室や廊下の写真を撮って歩いたり、授業がない先生と話したり。

「私の学年で先生に告白した女子何人おった？って覚えとらんか」

「覚えとらん」

「一世一代の告白した女子達が聞いたら泣いちゃうよ」

「Aくらい可愛くて素で話せるならいいけど、俺の表面しか見とらんやろ」

「私さり気なく告白された？困っちゃうなぁ」

「ふは、、案外俺らいいカップルになるかもな」

「先生が変〜」

長かった卒業式も退場の時間。出口まで先生方が並んでおめでとうと声をかけてくれる。

出口間際に立っている清水先生と目があう

「A、おめでとう」

堪えていた涙が頬を伝った。

右も左もわからない大人の世界に飛び込む私。

辛くなる時もきっとあるだろうけど、先生と過ごした時間を思い出して頑張るよ。

「真面目な話さ、告白したら付き合ってくれるん？」

「先生すぐ浮気しそうだからやだ」

「失礼やな、案外一途やで」

「...先生を好きだった時間は思い出にしたい。先生との思い出は、楽しいままにしときたい、かな」

「なんなん、、ずるいわ、」

「3年間ありがと」