聞こえる男【JM】２

嫌悪 ページ12

仕事のことでAさんと話して

自分のデスクに戻ろうとした




その時だった





YG「すんません 資料持ってってました」




打ち合わせの資料を返し忘れたらしく

担当さんが戻ってきた。






『あ ほんとだ。私も気づかなかった』




YG「すみませんでした」




『いえ、わざわざありがとうございました』





椅子から立ち上がり、頭を下げようとしたその時


後ろにいた俺に一瞬ぶつかりそうになった。







〘‥‥はぁ〙




うわ聞こえた

ぶつかりそうじゃなくて、ぶつかってた。







〘‥何度見てもそっくり〙



〘ウジンだ〙



〘違う人なのに‥〙










そういうこと






この人



いなくなった恋人に似てるんだ









なんで、こんなタイミングで聞こえちゃうかな



なんて思ってももう遅いけど。







担当さんを見つめる目は、遠い目をしていて

いなくなった恋人のことを想っているんだとわかった。







JM「あの人‥」



『ん？』




JM「いや 爽やかな人‥だね」




『あーうん そう？かな』






問い詰めることもできない。






Aさんから言ってくれないかな



昔の恋人に似てるんだよね〜って


今言ってくれたら受け止められるよ。









『よし、これ確認しなきゃだ。今日は忙しいよ』





JM「おつかれさま。また後で」





『うん 帰りにね』






言わないか。














デスクに戻ってきたあとも


モヤモヤ考えてしまった。








好きなままいなくなった恋人





その人が目の前に現れたら？


気持ちが蘇るんだろうか





よく似た人でも ドキドキしたり 意識したりするのか





少なくともあの人のこと見るAさんは


愛しい人を見る顔をしてたと思う。







なんで



こんなこと 知らなきゃ知らないままでいられたのに。








俺のこのいらない能力のせいで


知らなくていいことまで知ってしまう。








つくづく嫌になった。




こんな能力をもつ自分


恋愛することで湧き上がるこの黒い気持ち





人に話すこともできない。




こんなの もう嫌だ。

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