VS.研究開発部【妄想営業部】 (ページ9)

今日:10 hit、昨日:6 hit、合計:9,999 hit

3 ページ9

「え？」

ついさっき聞いたばかりの名前が再登場し、思わず声を上げてしまった。慌てて口を抑えたが、もう遅い。

駒田さんはそんな私を一瞥し、心情を察してくれたのか、さらに話してくれた。

「研究開発部の金の使い方が荒すぎるんだよ。再三注意してきたが、社長から許可は出ているの一点ばりだ。そんなことを言われても、会社の金は限られている。湯水の如く使われちゃ困るんだよ。メールで注意しても聞く耳を持たないから、直接乗り込んで話をつけてやる。ユウキ、行くぞ」

「はい！」

高らかな返事が聞こえ、榊原さんがパタパタと走って戻ってきた。

榊原さんはヘルメットを被り、手にはホウキともう一つヘルメットを持っている。

...ヘルメットとホウキ？

口を開きかけた私の言葉を代弁するように、駒田さんが言った。

「ユウキ、その格好は何だ？」

「武装です。研究開発部は何が起こるか分からないと聞きましたから。もちろん、ワタルさんの分もあります！」

榊原さんが、持っていたヘルメットを駒田さんに差し出した。

駒田さんは片手を出し、ヘルメットを受け取ることなく、その手を額に当て、ため息をついた。

「ユウキ...俺らは戦争に行くんじゃないんだ。そのヘルメットとホウキを今すぐ片付けろ」

「は、はい！すみません！」

榊原さんが、またしてもバタバタと駆け出して行き、すぐに身一つで戻ってきた。

「いいか、ユウキ。お前はビビり過ぎだ。いくら研究開発部が謎に包まれているからといっても、所詮は同じ人間だ。大体、こんなふうにあからさまに怖じ気づくから、逆に相手が上から目線になるんだろう」

「そ、そうですよね。すみませんでした」

「それに、だ」

駒田さんが人差し指をピッと立て、榊原さんの顔に向けた。そして、にやりと不敵な笑みを浮かべた。

「お前は、この私がヘルメットを被らないとシンイチロー神尾と渡り合えないと思うのか？」

榊原さんが、ブンブンと勢いよく首を振った。

「そんなことはありません！その通りです、ワタルさんは誰にも負けません。失礼しました！」

「分かればいい。行くぞ」

颯爽と身を翻した駒田さんが、歩きだそうとしてふと、傍らに立ったままの私を見た。

そういえばなんとなくこの場に居続けてしまったが、すっかりお邪魔になっている。私は今さら慌てた。

「あ、すいません、あの...」

「一つ、頼んでもいいか？」