VS.研究開発部【妄想営業部】 (ページ27)

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「そんなに不満があったのなら、直接乗り込む前に僕に言えば良かったんだよ。せめて乗り込みに行くときに誘って欲しかったなぁ。仲間外れはよくないよ」

「いやいや」と伊東さんが笑った。

「部長に迷惑かけまいと思って、わざと僕ら単独で動いたんですよ」

「知ってるんだよ、そんなことは」

部長はそう言うと尖らせていた口を引っ込めて、「でもね」とふっと真面目なトーンになって言った。

「君たちは、社外で十分に営業の仕事をこなしてくれている。誰にも文句をつけられないくらい立派な仕事ぶりだよ。だからね、社内のことくらい、僕に任せなさい。それが僕の仕事なんだから。なめないでよ？君たちがやるより、よっぽど上手く立ち回れるんだから」

そう言って、部長がにこっと笑った。

西山さんが笑ったようにため息をついて言った。

「分かってますよ、そんなことは。現に、今回の件も僕らよりよっぽど上手くまとめてくれましたし。悔しいくらいですよ」

研究開発部での一件から、二日が経っていた。

結局、あのまま妄想営業部へと引き返した私たちは、聞かれるがままに吉田部長に事情を全て説明した。すると、部長は「なるほどねぇ」と苦笑いを浮かべて頷いた。

「ま、僕に任せなさい」

それだけだった。

それからたった二日の間に、部長は全てを上手く取りまとめてしまった。

部署を問わず業務成績が優秀な社員をリスト化し、そこに選ばれた社員達が研究開発部オフィスを窓口として、機密情報保持の誓約書と共に試作品の受け取りと回収ができるようなシステムを作り上げた。

妄想営業部の負担が減り、試作品の情報の流出を防ぎながらも社内各部署から被験者として優秀な人材を集め、しかも仲村さんが試作品の送付と回収に広い社内を駆けずり回らなくてもいい。

おまけに、被験者に選ばれることは優秀な社員としての証、というイメージを添付したことで、実際的には業務が一つ増えているのに被験を断られることもほとんどなかったらしい。

完璧である。お見事としか言いようがない。

「まあ、多少意地悪もしたけどね」