VS.研究開発部【妄想営業部】 (ページ22)

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神尾さんが私を見て、そのまま一歩、座っている私の前に歩みを進めた。
そして右手を伸ばし、開いた手のひらを上にして私の顔の前に差し出した。

「おいで」

クールな低い声が、むしろ大人びて私の耳に響いた。

これで跪いたりでもしたら、体勢だけ見れば完璧な王子様だ。

目の前に手を差し出された私は思わず、誘われるようにその手を取ってしまった。

そして椅子から立ち上がったところで我に帰って、慌てて聞いた。

「え、どこにですか」

我ながら間抜けだとは思うが、端から見てもやはり間抜けだったのか、神尾さんが「クッ」と小さく失笑を漏らした。

恥ずかしい。途端に私の顔が熱くなったのが分かった。

「決まってるだろう？私のラボにだよ。先ほどシューゴが言った通り、君に試作品を試して欲しいんだ。この会社は何故か男性ばかりでな。女性が使用した場合のデータが欲しい。ほら」

神尾さんが、私の手をぐっと引いた。

「行きましょ行きましょ～」

仲村さんが私の背中をぐいぐいと押した。

さすがの師弟関係、見事な連携プレーで私の意思など関係なしに研究室に連れ込まれそうになる。

「え、ちょっ、あの、」

このままだと間違いなく、私はこの二人の実験動物(モルモット)まっしぐらだ。

「ま、待ってくださ」

「いやいやいやいや」

「待って待って待って待って」