VS.研究開発部【妄想営業部】 (ページ20)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:9,987 hit

6 ページ20

気づくと、私は研究開発部のオフィスの中、人だかりの中央にいた。

後ろを向くと、伊東さんと西山さん、駒田さんと榊原さんが、驚いたように私を見つめていた。
めったに動揺することのない優秀な方々ばかりなので、もし私に余裕があればこの光景を大層楽しめたかもしれない。

「大丈夫！？」と叫びながら、八代さんと石谷さんもドタドタとオフィスに入ってきた。

「ど、どうしてここに？」

伊東さんの質問は、八代さん達ではなく私に向けられたものだった。

答えようと口を開けた瞬間に今度は肩を掴まれ、視界が180度強制的に回転させられた。目の前に、神尾さんがいる。

私の腕を掴んでオフィスまで引っ張ってきた張本人である仲村シューゴさんが、嬉しそうに叫んだ。

「博士！！モルちゃんが来てくれました！！」

モルちゃん？？？？？

おそらく、仲村さん以外の全員が感じた疑問だと思う。

しかし神尾さんだけは既にご存知なのか、動じることはなかった。

「ようこそ。君が来るのをずっと待っていたんだ」

神尾さんが、ふわっと微笑んだ。ついさっきまでの冷徹な表情とは正反対の、優しげな笑顔だった。

神尾さんの笑顔が余程衝撃的だったのか、顔は見えないが、私の後ろで先輩方が息を飲んだのが分かった。

「さあさあモルちゃん、座って座って」

仲村さんがテーブルの椅子を引いて下さったので、私は思わずその椅子に腰を下ろした。

「えっとー、シューゴくん？」

堪えきれなくなったのか、八代さんが仲村さんに声をかけた。

「なんですかー？」

「なんでモルちゃん呼びなの？この子の名前にモル要素ないよね？」

仲村さんが、「えー？」と声を上げた。
なぜ分からないのか、まるで不思議だと言わんばかりに。

「モルモットのモルちゃんに決まってるでしょ」

「モルモット？」

「そう。モルちゃんに試して欲しい試作品が山ほどあるんです。だから、実験動物(モルモット)のモルちゃん」