VS.研究開発部【妄想営業部】 (ページ1)

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妄想営業部 1 ページ1

「だあ～～！！」

大声に驚いて振り向くと、西山さんが、叫びながらテーブルに突っ伏していた。

「だ、大丈夫ですか？」

声をかけ近寄ろうとした私の肩を、誰かが優しく叩いた。誰かといっても、今この営業部にはあと1人しかいない。

「コーヒーが足りないんだろう。すまないが、淹れてきてもらえるかな？」

伊東さんが私に優しい笑みを向けた。

距離が少し近いのも、肩に手を置いたりスキンシップが多いのも、下心などではなく、この人のコミュニケーションの方法だ。西山さんが以前教えてくれたのだが、伊東さんは学生時代に海外留学を長い間していたらしい。イタリア人のような甘い振る舞いはその影響だろうか、それとも単純に本人の気質なのか。

いずれにせよ、インターンシップ初日からちょうど1週間、動揺してばかりだったこの人との会話にもやっと慣れてきた。

「分かりました」

私は微笑んで、給湯室へと向かった。

2人分のコーヒーを沸かしている間、小皿にマドレーヌを並べる。西山さんは、甘いものとコーヒーが大好物だ。本当ならケーキをお出ししたいところだが、インターン生の身分で冷蔵庫の中に眠るケーキを取り出す勇気はない。

コーヒーとマドレーヌの乗ったお盆をオフィスに持っていくと、西山さんと伊東さんは並んで座り、なにやら談笑していた。見たところ、既に西山さんは落ち着きを取り戻している。

西山さんの手元にコーヒーカップを置くと、「ありがとう」と柔らかな笑顔が返ってきた。

いつもの穏やかな西山さんそのものだ。

「伊東さんもよかったら。お茶菓子も持ってきました」

「ありがとう。君は本当に気が利くな」

「いえ、そんな」

「しかし、一つ注意しなきゃいけないことがある」

伊東さんはそう言って、私の鼻の前で人差し指を立てた。