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「お前らが何のために金塊を見つけようとしているのか知らんが、鶴見中尉の背負っているものとはおそらく比べ物にならんだろう」
大義のために戦う男、それが谷垣から見た鶴見中尉の印象だ。それが真実であるかは一旦置いておいて、スカラは聞かなければいけないことがある。
杉元達が家を出ていった後、彼女は谷垣と二人きりで話した。
「第七師団は冷遇されていると言ったが本当か？」
「……異人だから知らんのか。確かに陸軍最強と名高いが軍部での立場は弱い」
「ふぅん……あ、見た目はこんなんだが戸籍上は立派な日本人だ。認識を改めるように」
「え」
スカラはそれ以降考え込んだ。ラプラスの悪魔は別世界ではあるが自身の知る歴史だと語ったが…スカラの記憶の中で三千の命ともに手に入れた最強の称号を讃えられることあっても冷遇されたというものは無い。
それどころか関係している人物が異なっている。第七師団の師団長は大迫尚敏のはずであり、決して彼は自害などしてない。したとすれば乃木希典の方なのだが……。
成程、あの野郎嘘吐きやがったな。
実際の歴史と言えばスカラが改変しない方向性にでも行くと思ったらしい。悪いがそんな罪悪感は一切無い。
おそらくだが、それらをモデルとしてその花沢中将なる人がいるのではないだろうか。
ずっと考えてはいたのだ。とくに白石由竹を見てからだが……あいつ白鳥由栄にそっくりじゃね？と。時代が違うが別の人間の要素を掛け合わせた人物がいるのだから多分今更だ。
つまり、スカラは自分が知らないだけで、実は漫画や小説などのフィクションの世界なのではないかと考えたわけだ。
「スカラ！オオワシを捕まえに行くが来るか？」
「オオワシ？行くけどなんでまた……」
スカラは思考を止め、疑問を口にしながらものそのそ立ち上がる。頭はまだ痛むが動いていた方が気が楽なのだ。
「ありがとうな谷垣。辛いだろうにすまなかった」
「……いや、大丈夫だ」
こざっぱりとした、ツルツルとした質感があって質量は軽い感謝と謝罪。殺されかけた相手だというのに公平に接する態度と、あの重苦しい殺意とのコントラストが違いすぎて谷垣は少し鳥肌が立った。
杉元も鶴見中尉も大した人間だが、このスカラという女はそれ以上に何かおかしく感じたのだ。
人間…と言うよりは、未知の存在。はらわたの色からまるッきり違いそうで恐ろしかった。
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作者名：mYDEAr | 作成日時：2024年3月13日 11時
