【金カム】リベラリストは黄金螺旋の夢を見るか？弍 (ページ19)

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ホテルに着き、杉元が声をかけるとすぐにトトッという軽い音を立てて女性が階段から降りてくる。

「いらっしゃいませ女将の家永です」

口元のホクロが艶やかな美女だ。白石が早速口説きに手を差し出した。心做しか彼女の目が死んでる。

部屋は三部屋借りることになった。白石とキロランケ、杉元とアシㇼパ、そしてスカラ。女性だからと気を使ってもらったのだ。

部屋に案内してもらっている最中、随分と入り組んだ作りになっていることに気が付いた。曰く古かったので彼女が引き継いでからも改装に改装を重ねたとのこと。

「ウィンチェスターハウスみたいだな」
「なんだ？それ」
「アメリカの幽霊屋敷だよ」

有名な銃器メーカーのウィンチェスターの社長、彼が亡くなった後遺された妻が造り出したミステリーハウス。彼女が亡くなるまでの38年間絶えず建設が続けられた。その家はウィンチェスター銃によって殺された人々の霊によって呪われており、霊障から身を守るには隠し部屋・秘密通路をひたすら増築し続け備えておく事しか方法がないと妻は妄執していたとされている。霊媒師はウィンチェスター家が代々製造してきた銃が多くの人々の命を奪ってきたため、一家にかけられた呪いが存在すると妻に告げた。さらに霊媒師は、銃のせいで幾千という人々が死に、彼らの魂がいま復讐の機会を求めているのだとも語った。そしてアメリカ西部へ赴き、その恐ろしい銃で亡くなった人たちの霊のために家を建て増設し続けろと伝えたのだそうだ。
このことを噛み砕いて四人(白石は家永を口説いていてあまり聞いていなかったが)に話すと、幽霊屋敷という言葉に慄いていた杉元が一変して鼻で笑う。

「銃を作り出した一族ってだけで呪われるのか。なら、実際に人を殺した俺達はどれだけ呪われてるんだろうな」

不意にアシㇼパの方へ顔を向ける。彼女は杉元のこういう話題をあまり好まないから。案の定少し暗い表情をしていたので、しまったなぁとスカラは頬をかいた。

微妙な空気感を作り出してしまったことに若干の気まずさを抱えたままスカラは部屋に入る。

ホテルと言うだけあってやはり洋風の内装で、この世界に来てから初のベッドを目撃した。
スカラはコートとジャケットを脱ぎ捨てベッドに倒れ込む。包み込むような布の柔らかさに身体が沈んでいく。清潔な石鹸の香りに目を細めた。