ぐるぐる関係 ページ43
沖田side
·
『食べきれちゃいました』
清水寺と地主神社から清水坂に戻り、立ち並ぶ店の中にあった鴨そばの店で早めの昼食。
登ってくる時、俺もAさんも山ほど試食をしたのに、お互いペロリと平らげられてしまった。
「美味かったですねィ」
『はい!』
ごちそうさまでした、とAさんは箸を置く。
地主神社、縁結び、恋。
清水寺から連れてこられた時、実は結構びっくりした。
わざわざこんなところに来た、ということは。
…Aさんは、誰かに恋でもしてるのか。
来てみたかった、とは言っていたけど。
お参りの列に並んでいる間、それをずっと考えていたせいで、何を願うか全く思いつかなかったのだが。恋愛だろうとなんだろうと神は神なので、とりあえず健康を祈っておいた。
Aさんは、やけに真剣に何かを願っていて。やはり好きなやつがいるんじゃないか、という考えが頭をもたげた。俺とAさんは契約で結婚しただけなので、相互の恋愛は自由なわけだが。いや、でもなんというか、なんというか。
神社の中には恋を占う石があったそうだ。やらなくていいのか、と彼女に尋ねたら『いえ、ここに来てみたかっただけなので!恋とかないんで!』とやけに大振りに否定された。
怪しい。
──Aさん、好きな人、恋占い。
ありえない単語の連なりが、さっきからずっと俺の胸中をぐるぐると回っているのである。
『次は平安神宮ですよね?』
「ああ、はい」
どこをどう回るかは、なんとなく決めていた。
予定では、次の行先は平安神宮だ。
店を出て坂をくだり、バス停に向かう。
ぐるぐるしているのは、もうひとつ。
…俺、全然Aさんと距離置けてなくね?
決めたはずなのだ。彼女を傷つけないように、距離を置く、と。
ところが、全く実現出来ている気がしない。結局余計な事まで口にしている気がするし、手は握りっぱなしだったし、むしろ暴走は悪化の一途をたどっている。
ああ、どうすんだっけ。人と距離を置くって、どうやるんだっけ。
…仕事柄、突き放すことには、慣れているはずなのに。Aさんを前にすると、どうにもそんな行動は取れないのだ。
『バス、混んでますかね』
「あー、どうでしょうねィ。さっきは座れたけど」
バス停で、ぽつぽつと会話をしていれば、バスはやってきた。
かなり混んでいる。当然椅子も空いていないので、前の方まで進み、つり革につかまる。今度は物理的に彼女と近い。
ぐるぐる、心の中の周回は勢いを増している。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時