恋する関係 ページ42
Aside
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沖田さんの方が背が高い、というわけで、私は彼にスマホを預けてシャッターを押してもらうことにした。カメラアプリを起動し、内カメモードに切替える。
「…こんな感じですかね?」
スマホの画面には、背景の緑と私たちがうつっている。いわゆる自撮りというやつだ。やってみたのは初めてかもしれない。
『あ、沖田さん見切れちゃってる』
「んー、こっち?」
ふいに沖田さんは、私に身を寄せてきた。
思わず声を上げそうになるのを、必死に堪える。
い、いきなり近づかれたらびっくりするし、なんか近いし、密着してるし、あれ、なんか、やばい。沖田さんとくっついている部分が熱を持っていくように感じた。
『お、OKです』
「んじゃ、撮りますぜ。はーい、チーズ」
のんびりと声を上げた沖田さんは、指を伸ばしてスマホの画面に触れる。
口角を上げて目を少し開く。…変な顔になっていないだろうか。
写真を撮り終え、沖田さんは私から離れた。
安堵と少しの落胆を胸に、スマホを受け取る。
『いい感じに撮れてます』
山の緑と塔、並んだ私と沖田さん。若干自分の顔が引き攣っている気がするけど、きっと気のせいだ。沖田さんは少しだけ唇を弧の形にしている。やっぱり綺麗な人だ。
「良かったですねィ」
果たして興味があるのかないのか、頷いた沖田さんはもう一度景色を見やった。
この写真、大事に保存しておこう。
***
『…ここです』
清水寺の境内にある、とある神社。
事前にネットで調べて、どうしても行きたかった場所だ。
「地主神社?…縁結び、恋愛成就」
沖田さんは看板の字を読み上げた。
恋のパワースポット、地主神社。
あああ、ちょっとかなり、恥ずかしい。
神頼みでもしたくなってしまうくらい、私は片想いなのだ。恋する身としてはこういったスポットに足を運んでみたかった。
なんて言い訳をするものの口に出せるわけはなく、微妙に笑うことしか出来ない。
『一回来てみたくて、すみません…』
「いや、いいですけど」
石段を昇って鳥居をくぐる。
全国的に有名な恋愛パワースポットのだけあり、若い女の人が沢山いた。
参拝の列に並べば、すぐに自分達の番は来た。
二礼二拍手、目を瞑る。
何を、願おうか。
両想いだなんて、不可能だ。
高望みはやめておこう。他にないかな。
そうだ。せめて。
──沖田さんと、これからも楽しい時間が過ごせますように。
気づけば沖田さんはお願いごとを終えていて、私は慌てて一礼したのだった。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時