近い関係 ページ36
Aside
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旅行会社から配布された大きな切符を改札機に入れれば、穴が空いて返ってきた。
日本一のターミナル駅である大江戸駅は、早朝から人で溢れていた。スーツケースを引いて歩く観光客らしき天人、誰かと電話をしながら足早に通り過ぎるビジネスマン。時々アナウンスが流れ、電光掲示板が目まぐるしく変わっていく。
『何番ホームでしたっけ』
「14番ホームって書いてありまさァ」
『じゃあ、あれですね』
親子連れの後ろに並び、エスカレーターに乗る。いよいよ京都に向かうのだ。沖田さんと新婚旅行、IN京都。また心臓が踊り出す。
エスカレーターを降りた時、ちょうど新幹線が滑り込んできた。ホームを歩いて乗車する。私たちの座る席は車両の後ろの方なので、歩いて移動した。
「窓側どーぞ」
『あ、どうも』
椅子がふたつ繋ぎになった列の窓側に腰かける。沖田さんが私の隣、通路側に座った。
…近い。
…思ってた以上に近い。
新幹線のシートってこんなに隣と密着してるっけ?ぐるぐると頭が空回りしているのが自分でわかる。近い、なんか、近いのだ。
土方さんへの作戦の時はもっと近い距離で色々やってたけど、その時と今とは大違いだ。だって、今の私は沖田さんが好きなのだから。
微妙に触れるような触れないような、体温がちょっと伝わってくるような、私と沖田さんの間の空間。…絶妙さにやられそうだ、変に意識してしまう。
私が一人で混乱していることなど関係なく、新幹線は大江戸駅を出発した。
この後近くの駅に止まるからか、まだスピードはゆっくりだ。私は窓の外から、そろそろと沖田さんの方に視線を移す。
沖田さんは車両の前の方にある電光掲示板を眺めていた。時々、長い睫毛が瞼とともに上下する。
さっきから意識してしまっているせいだろうか。瞬きひとつで私と沖田さんを取り巻く空間の流れが変わっている気がして、私は沖田さんから目を離せなくなる。
ふいに、沖田さんが赤い瞳を動かして、真横──私を見た。
ばちりと視線が噛み合って、私は思わず息を飲む。
なんとも言えない沈黙が私たちの間を包んだ。
目は合っているのに、互いになにも喋らない。
…来る時どうやって話してたんだっけ?頭の空回りは直っていないようで、口が動かせない。
なんだ、この、間。
沖田さんは、無表情で私を見たままだ。
相変わらず何を考えているか分からない。
「あの」
と、ついに沖田さんが喋った。
私は、はい!と無駄に威勢のいい返事を返した。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時