崩壊の関係 ページ35
沖田side
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日差しが随分穏やかになった、少なくとも朝は。
サイズの小さいスーツケースを引っ張り、コンクリートの上を歩く。秋はそろそろか、と毎年この時期に期待するが、だいたいいつもすぐ暑くなり、涼しくなり始めるのは十月頃だ。
『だいぶ、涼しいですね』
俺の左側を歩くAさんも同じ感想を抱いたのだろう。
「確かに。昼間は暑いですけどねィ」
少し考えて言葉を返す。これを癖にすれば、きっとAさんを傷つけることは無いはずだ。
…果てしなく面倒な自分の無意識にそろそろラリアットを決めたい。原因も何もわからないのだから、手探りで対策するしかないのだ。
『京都と江戸って、どっちが暑いんでしょうか』
「あー、どうなんですかね。イメージ的には、京都?」
──ただいま朝の六時半なのだが、道路はもう既に車だらけだ。江戸の朝は早いらしい。こんな朝っぱらから働けるとは、皆さん元気だ。俺達が駅に近づけば近づくほど人通りも賑やかになる。
『確かに日差し強そうですよね』
Aさんは空を見上げる。
その動作と同時に彼女の黒髪がふわりと動き、微かに甘い香りがした。なにかの香水だろうか。
今日は耳の下で緩く髪の毛をまとめている。毎朝寝癖を直すので限界の俺からすると、世の中の女はなんで朝に髪の毛を結ぶ余裕と体力があるのか不思議で仕方ない。
「…楽しみですかィ、旅行」
Aさんの視線が、空から俺に移される。
あ、しまった。
俺はまた、【自分が何も考えずに喋った】ことに気づく。油断した。考えてたらするっと飛び出てしまった発言。なんだか頻度が上がっている気がする。
そんなに変なことを言わなかったのが不幸中の幸いだ。
『は、はい。結構、楽しみです』
照れたように笑うAさん。
なぜか、俺は嬉しくなって自然と笑みを返す。
「…俺も」
良かった、一人で盛り上がってただけだったらどうしようかと思いました、とAさんは眉を下げ、更に笑いを深めた。
…自然と笑みを返す?
「俺も」?
なんだそれ、なんてことしてんだよ俺!
Aさんに見つからないようにこっそり天を仰ぐ。
キャラ崩壊もいいとこだ、なんだその王子的な振る舞い何やってんの本当。どこいったんだ俺のサディズム。
思ったより重症な無意識暴走。
このままだと二日間のうちにとんでもないことを仕出かしそうで怖い。
これまた不思議なことに、ずっとニコニコしたままのAさんと目の前の駅舎を見やり、心の内でため息をついた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時