綺麗な関係 ページ20
沖田side
·
『きれい』
その声に、俺は横を向いた。
空をまっすぐ見上げるAさんは、嬉しそうに笑っていて。
花火の爆音が、耳の奥まで響く。
落ち着いた柄の浴衣。
まとめられた髪。
いつもは見えない彼女のうなじ。
なんだか眩しく見えるような気がして、俺は花火へと視線を戻した。
空は光に照らされ、明るい。
「ですねィ」
俺は目を細めて、その光を眺める。
毎年見ている、江戸の花火。別にどこでも見られるような、普通の花火。
見慣れているし、何にも去年と変わっていないはずなのに。
今年は、やけに眩しい。
理由を考えて、すぐに思い当たった。
隣に、Aさんがいるからだ。
去年はいなかった人。出会わない可能性の方が高かった人。
自分を助けてくれた人。
純粋に、ああ、よかった、と思った。
隣に、この人がいて、よかった。
理由も理屈もなく、ただ、その感情だけが落ちてきたのだ。
『…あ』
連続で派手な花火があがったかと思うと、途絶えた。
花火の打ち上げが終わったらしい。
「終わりやしたね」
遠く聞こえる放送。まもなくかぶき町夏祭りは終了致します。ご来場ありがとうございました。繰り返します。まもなく__
『すごい、綺麗でした』
まだ興奮が冷めやらぬのか、勢いよく立ち上がるAさん。俺も笑って腰をあげる。
『来て良かったです、本当に』
Aさんは辺りを見回す。
ライトが消されている出店が増え、段々と片付けが始まっている。
俺達はその間を縫うように歩き始めた。
帰ろうとする人が一気に流れ込み、身動きが取りにくい。
反射的にAさんの腕を握る。
「気をつけてくだせェ、人ごみ」
下手したらはぐれてしまう。チャイナ達もいない今、人混みに流されたらかなり面倒だろう。
『…はい』
Aさんの声が戸惑っているように聞こえた。いきなり腕を握ってしまったからだろうか。
そこで、ポケットに入れていたスマホが震える。デジャブだと思いつつ、人にぶつからないよう自分の体に寄せて取り出す。
土方十四郎嫁を家まで送ったら戻ってこい、後片付けだ
はん、と鼻を鳴らしてスマホをしまいこむ。気を使ってるつもりかこの野郎。嫁って言い方なんだよ。苛立ちと微妙な羞恥心が腹に溜まった。
どうにか人の波から脱し、マンションへの一本道まで出る。
『すみません、送って貰っちゃって。お仕事、大丈夫ですか』
「気にしないでくだせェ。仕事サボれるし」
そういえばここは、いつかの川沿いの道だ。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時