歩く関係 ページ40
Aside
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沖田さんは手先が器用なのだろうか。何故か苦笑いしている彼を眺める。
…髪飾り、気づいてくれたのだ。
今考えれば沖田さんに髪の毛をいじられるなんて相当凄いしうっかり顔が熱くなりそうになる。沖田さんが髪飾りをちゃんと見たのはきっとあの一瞬だけで、それなのに、分かってくれた。
嬉しいこと、この上ない。覚えてて、くれた。
実は今日の浴衣や髪型もまたお妙さんにプロデュースしてもらったのだ。その時にふと思い立ってあの髪飾りをつけようと決めた。正解だ。何となく判断を下した当時の自分に親指を立てたい。
「あ、ここですね」
いつの間にかバスは清水寺ちかくの停留所に停車しようとしていた。ボタンを押して、バスからおりる。私たちの他にもバスから降りた人が結構いて、人気スポットであることを感じさせる。
『…うわあ』
清水寺につながっているのは、長い坂。
左右に立ち並ぶ和風のお店、急な勾配、行き交う人々。テレビなどの映像で見る風景そのままだ。私はしばらくあんぐりと口を開けていた。
「すげぇ人。今日平日なのに」
沖田さんの声にはっとして横を見る。彼も広がる風景に視線をやっていた。
今日は九月のごく普通の火曜日だ。確かに、その割には観光客はすごく多い。
『人気な場所は年中こうなんですかね?』
「だと思いますぜ。ここらで働くの大変そー」
ようやく、私たちは足を動かし始めた。
お土産屋さん、雑貨屋さん、食べ物屋さん、よくわからないオシャレな建物。
私が吸い寄せられるように雑貨屋さんを覗いたり。
沖田さんが【超苦い!あなたは食べれる?】と書かれた謎の食べ物のパッケージを手に取ったり。
雑多にひしめく坂を、あちこち寄り道しながら登っていく。
「試食って最高だと思いやせんか」
『…こんな食べて、店潰れませんかね…?』
八つ橋専門店、大量に置かれた試食品からホイホイと八つ橋を食べていく沖田さん。ニッキ、チョコ、黒ごま、抹茶、あらゆる味を制覇している模様だ。いい食べっぷり、と言っていいかはわからないが、そんな彼の様子に笑いと不安が零れる。
「大丈夫でィ、かつて俺は試食王と呼ばれていたことがあったかもしれなくもなくもなくもなくもないので」
『どっちですか』
だんだん店員さんの視線が気になってきたので、沖田さんを引っ張ってお店から出る。
『ふう。…なかなか坂、きついですね』
沖田さんは余裕なのだろうけど、運動を全然しない私にとったらこの坂は結構辛いのだ。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます。 (2019年10月25日 23時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - と〜っても面白いです!更新頑張ってください! (2019年10月25日 19時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 麗桜さん» ありがとうございます!嬉しい限りです。マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします! (2019年10月19日 18時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - とっても面白いです!無理矢理原作に沿っていなくて,とても読みやすいです!更新頑張ってください! (2019年10月19日 16時) (レス) id: a174017b38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年8月25日 22時