ハ ナ ビ 4 ページ9
Aside
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俺のありがたい話、もっと聞きたいか?なんて調子に乗ってきたので、『結構です仕事に戻ってください』と止めた。
「冷てえ部下だなあ」
坂田先生はぼやきつつパソコンに戻る。
気付けば職員室には私と坂田先生しかいなくなっていた。よく教師は遅くまで残って作業するなんていわれてるけど、この高校では関係ないようだ。
私も書類をさばいていく。
秒針の音が響く。
_カチコチ。
__カチコチ。
___カチコチ。
ぐう、と音が鳴った。
『え?』
「腹減った、無理ー」
坂田先生のお腹の音だったようだ。
ふと時計を見れば七時。ぶっ通しで三時間仕事をしていたことになる。
そりゃ、確かにお腹も空くか。
『私もお腹すいてきました』
「ちょっと休憩にしようぜ」
残っている仕事の量は明らかに減っている。真面目にやれば坂田先生もそれなりのスピードで仕事をこなせるらしい。頼むから普段もそうしてくれ。
『そうですね、だいぶ片付いてきましたし』
私もうーん、と背伸びをする。鈍い骨の音が聞こえた。相当凝ってたんだな。
「よし、俺コンビニ行ってくるわ。なんか欲しいモンある?」
坂田先生は立ち上がる。高校の真向かいにはコンビニエンスストアがあって、先生も生徒もよく利用しているのだ。
『うーん、じゃ、おにぎりふたつとサラダお願いします。坂田先生セレクトで』
「おー、任せとけ」
ちょっとセレクトが不安だけど、まあ大丈夫だろう。むしろ買いに行ってくれるのだからありがたい。
「もうちょいで花火上がる時間?」
職員室を出ていこうとしていた坂田先生が突然こっちを振り返った。
『え?あ、そうですね』
「ふーん」
坂田先生は何事も無かったかのように再び私に背を向けて去っていった。なんだったんだろ。
花火かあ。ここから見えるかな。
職員室にもベランダがついているから、そこから花火が望めるかもしれない。
うんしょと回転椅子をベランダに運ぶ。
ベランダの扉を開ければ、生ぬるい風と夜の匂いが体を包んだ。微かに花火大会の喧騒が聞こえる気もする。
きっと今頃、もうすぐ打ち上げ始める花火への期待で会場はそわそわしてるはずだ。
従姉妹はうまくやれただろうか、なんて考える。
きらきらするのに年齢制限は無い、と坂田先生は言っていたけど。
それが正しいなら、明らかに私はまだ青春を経験してなくて。
カップルだったり、友人達だったり。
彼らが盛り上がっているのを、なんとなく想像して、ぼーっとしていた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時