ハ ナ ビ 3 ページ8
Aside
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坂田先生からカップルの話が出るのは稀で、ちらりと顔を窺い見る。坂田先生の視線は相変わらず資料を作っているパソコンに向けられたままだ。私も書類に目を戻した。
『行ったと思いますよ。約束してるの聞きましたしね』
何て青春チックな。私も学生時代もっと遊んどけば良かったな、なんてちょっと後悔する。
うちのクラスにもいわゆる《リア充》が何組かいて、こっちが見ててヒヤヒヤドキドキするようなラブラブライフを送っている。
「ふーん、そうか。喧嘩とかして帰ってきたら笑える」
ひどい発言をしている割には、坂田先生の声はだいぶ穏やかで優しかった。きっと生徒の色恋沙汰に興味が無いように見えて、一番関心を持っている人だと思う。意外と生徒のことをかなり真剣に考えているのだ。それが伝わっているから、生徒にも信頼されている部分があるんだろうな、とちょっと感心していたら、こっそり週刊少年ジャンプを読み出したのですぐにまた取り上げた。さっきの言葉は取消。
『私の従姉妹もこの辺に住んでて。好きな男の子を誘うって言ってました。うまくいったかな』
仕事に戻った坂田先生を確認してから口を開く。
「従姉妹も高校生?」
『はい。羨ましいくらい輝いてますよ』
私はその従姉妹とちょくちょく会って話をするのだが、一緒に居るとよく分かる。好きな子のことを恥ずかしそうに、でも嬉しそうに話して。やけにきらきらしている従姉妹といると、自分のカサカサっぷりを痛感してしまう。
『年齢的にはそこまで離れてないんですけどね。もうあんなきらきら光る恋愛はできないかなぁ』
学生時代、きらきらの片鱗もなく過ごしていた自分に、なんて勿体ないと声掛けをしたい。従姉妹やうちのクラスのカップルを見ていると、青春という季節は本当にあっという間で貴重なんだとしみじみと感じてしまう。
「別にもう出来ないわけではないんじゃね」
遅くはねぇだろ、と坂田先生は呟いた。
私は思わず手を止める。
「ガキだろうがばーさんだろうが、そういう恋愛するときゃするだろ。年齢制限があるわけじゃねぇし」
淡々と語られるその言葉に、聞き入ってしまう。視線を変えずに話す坂田先生に。
「青春は十代だってイメージあるけどさ。本人たちにとっちゃ八十代でも青春じゃねえか?」
ようやくこちらを見て、にかりと笑う先生。
___悔しいけど、ちょっとかっこいいとか思ってしまった。
『…たまにはいいこと言うんですね』
「いつもだろ?」
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時