ツ ヅ キ 7 ページ33
Aside
·
「うおー!部室アルぅ!」
お酒も相まってテンションの高い神楽が、部室のドアを開けた。
「全然違うな」
十四郎は部室を見渡す。物の配置に壁に掲げられた掲示板、私たちがいた頃とは変わっている。
『でも、この匂いはそのままじゃない?』
それでも少し木の匂いの交じった空気なんかは十年前と変わってない。
「あと、この壁の傷もねィ。どこかの怪力女がつけた傷」
「誰が怪力女アルカこのやろー!」
「自覚あるんじゃねえか」
いつか神楽が調子に乗ってつけた傷も、そのまま残っていた。
私たちの笑い声が、いつかと同じように部屋に響く。
***
見た目が変わっても、私たちはここにいる。
変わるものがあっても大丈夫。
変わらないものは、絶対にある。
私たちが忘れない限り、あの頃は続いていく。
「A?」
十四郎に名前を呼ばれて、慌てて我に返る。
部室を出て教室に戻っている最中だ。神楽と起きたは先に行ってしまったらしい。
『いや、』
十年前からずっと、私は十四郎の隣にいたのだ。なんだかそれがとんでもない奇跡のように思えてくる。
『私はずっと、十四郎と一緒に居られてるなって思ってさ』
十四郎の目が僅かに大きくなった、気がした。
『改めて考えると、凄いことじゃない?…ずっと隣にいられて、』
よかった、と言おうとした瞬間、目の前が暗くなった。
…正確には、十四郎の着ているスーツの色で埋め尽くされた。
十四郎の暖かさと微かなたばこの匂いと、重さが遅れて伝わる。
『ど、うしたの』
十四郎が私に抱きついてくるなんて、珍しい。しかもこんな場所で。
「こんなに長ェ間、お前と一緒に居られて、本当に、よかった」
ふっと十四郎は私の体をはなし、視線を合わせた。青みがかった瞳が、私を見すえる。
「俺と一緒にいてくれて、ありがとう」
いつかの十四郎が蘇る。
廊下でぶつかって、出会った日の十四郎。
部活に打ち込んでいた十四郎。
共に進路に悩んでいたときの十四郎。
笑っていた、十四郎。
『私も、』
彼のおかげで、私の青春は、私の人生は、幸せだった。最後は笑っていられた。
『ありがとう。隣にいてくれて』
自然と笑みがこぼれる。今度は私から、十四郎を抱きしめた。
「これからも、よろしくな」
『うん!』
彼と一緒なら、大丈夫。
私は、歩いて行ける。
この光景を沖田に激写され、酔った元3Zメンバーにプロポーズだなんだと騒がれるのは、五分後の話である。
__ツ ヅ キ 終__
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時