ネ オ ン 4 ページ19
Aside
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「な、なによ、それ、屁理屈じゃない」
女性は明らかにうろたえている。桂さんは淡々と言葉を紡ぎ続けた。
「屁理屈などではなく、ただの事実だ。閉まったレストランに料理を作り直せという方が屁理屈だぞ」
その例えに顔を真っ赤にする女性。
私はぽかんとしながら二人の行く末を見る。
「なんですって、その、このっ…」
「何か誤解があれば聞くが」
毅然とした桂さんの態度。
耐えきれなくなったんだろう。女性はレジに置きっぱなしだった本をひっ掴み、どすどすと早足で出ていった。
あれ、これ…
「どうやら解決したようだな」
桂さんは呟いて、従業員エリアに入っていった。
「ごめん!シフトの時間に間に合わなかった。なんか問題とかあった?」
そのタイミングで店長が店に駆け込んできた。
あまりの急展開、鮮やかな引き際。私は瞬きしながら、答える。
『桂さんに、助けられました』
***
『桂さん!』
ショッピングモールを出ていく桂さんを慌てて追いかける。何とか間に合った。バイト終了後、いつもなら店で軽く挨拶して別れるけど、今日は私が店長に事情を説明している間に店を出てしまったようだ。
「…なんぞ?」
『あのっ、さっきは、ありがとうございました』
ようやくお礼を言うことが出来て、ほっとする。桂さんは学ラン姿で私を振り返った。
「いや、礼を言われるほどではない。それに、むしろ申し訳なかった」
『へ?』
眉毛を少し下げる桂さん。
助けて貰ったというのに、なんで桂さんが謝る必要があるんだろう。
「しばらくあの客の暴言に付き合わされていただろう?できれば早く行動したかったが、あの状況では火に油を注ぐだけだと思ったんだ」
だからシフトの終了時間まで待ったんだが、と桂さんは本当に申し訳なさそうで。
私はまた目を瞬かせてしまう。
騒ぎに気づいていたけど、作戦のために、しばらく放置せざるを得なかった。その点を、謝っているのだ。
『…いっ、いえいえ!むしろ、ああやって注意してくださって、助かりました』
きっとほかの注意の仕方ではもっと面倒なことになっていただろう。桂さんの機転に感心する。
「ならいいんだが」
桂さんはそう言って少し笑った。
…なんだか、意外だ。真面目で堅物だと思ってたけど、機転の利き方は半端ないし、それに、始めてみた彼の笑みは、思っていた以上に人懐っこい。
「そうだ、今日はそのせいでいつもより遅くなってしまった。よかったら、送っていこうか?」
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時