ネ オ ン 3 ページ18
Aside
·
『お客様、レシートはお持ちで…』
「そんなものいらないわよ、ここで買ったの!」
そんなわけないって。
なんで閉店間際にこんなクレーマーが来るの。営業スマイルを貼り付けて、私は対応する。
『大変申し訳ありませんが、レシートがないと、返品や交換はできかねますので…』
「はあ!?お金返してもらえばいい話なの。さっさと対応しなさいよ!」
『しかし…』
本来、こういうクレーマーや困った客が来た時は、店長に回すことになっている。でも、肝心の店長は、今トイレだ。
どうしよう、この人の勢いをとめられる気がしない。
「全く、使えない店員ね!そんなんだからこわなミスが起こるのよ」
本を叩きつけながら捲し立てる女性。
使えないって言われても困ります、とは言えず。
『申し訳ございません、ええと…』
「いいからお金返してって言ってるの!謝罪は必要ないわ」
ほんともう、なんなんだこの客。
あまりに理不尽だ。こんなクレーマーにあったことなんて初めてで、対応が分からない。早く帰ってきてよ店長。どうしよう。
「ほんと、いい加減にしなさいよ!金返せ!」
だんっ、と今までで一番強く台を叩くものだから、思わず肩がはねる。
泣きそうな気分になりながら、謝罪を繰り返そうとした時。
「おい」
突然かけられた声に、顔を上げる。
「なによ、あんた…」
声の主は、厳しい目付きをした桂さんだった。
エプロンを外し、片手に持っている。
女性もそれに気づいたようで、露骨に眉をひそめた。
「あのねぇ、店員が客に向かって《おい》なんて言うわけ?これだから」
「いや、今はもう店員ではない」
…どういうこと?
彼の言葉に、女性も私も首を傾げる。
「確かに俺はここでバイトをしている。シフトは二十一時まで。そして今は、二十一時二分だ」
桂さんにつられて時計を見ると、確かにシフトの時間は過ぎていた。
「よって、今は店員ではなくただの客のひとり。エプロンを取っているのが証拠だ」
桂さんはつかつかと女性の隣に歩みよると、私の腕をいきなり掴んだ。
「彼女のシフトも二十一時まで。俺と同じく、もう店員ではない。貴女の対応はもうできないのだ」
女性はぽかんとしていたが、我に返ったかのようにまた喋り出す。
「あっ、あのねえ!」
「店員でない人間が客の対応をするわけないだろう。ちなみに、この店も二十一時に閉店だから、店員でも対応できないぞ」
明日また来ることをお勧めする、と桂さんは言いきった。
45人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時