ひだまりとあお２【銀魂短編集】 (ページ15)

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オウセ 5 ページ15

Aside
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今年は、約束の十分前に待ち合わせ場所に着いた。
行き交う人々を見る。
浴衣姿の人もちらほらいた。私も、去年と同じ格好をして同じ場所に立っていて。

《Aのこと、好きだよ》

あの夜、神威はそう言った。
ずっと、会いたいと思っていた。
ずっと、伝えたいと思っていた。
彼と別れた三年間、私はひたすらに片思いをし続けていたのだ。ほとんど顔も見合わさない相手に恋をし続けていたなんて、健気もいいところだ。

でも、相手も同じことを考えていたなんていう、奇跡が、起きていたとは、想像もしていなかった。

《中学卒業してさ、Aをずっと好きだったことに気づいちゃったんだ。そのくせ行動できなくて、君のこと見てるだけで》

神威の言葉に、思考力を失った私は、馬鹿みたいに神威の顔を眺めることしかできなくて。
花火の音が弾けて、光が神威の顔を照らす。

《ごめん。ずっと、ちゃんと、言いたかった》

神威は私から視線を外して、花火に向き直る。
私も倣うように花火を見る。でも、その光は目の表面をかすめるだけで、頭に届かない。
ゆっくりと、私は考え始める。
神威は、私が、好きだった。
片思いじゃなかった。私のひとりよがりだと思っていたけれど、違った。
＿＿こんな奇跡は、もう２度と起こらないんじゃないか。こんな嬉しいことは、もう一生起きないんじゃないか。今日で、全ての運を使い果たしてしまったんじゃないか。

返事なんて、とっくに決まっていた。
だから、それを、最高の形で伝えたかった。

「Aー」

遠くから彼の姿が見えてきて、私は軽く手を振った。

「早いね、５分前に着くようにしたのに」

その言葉に腕時計を見れば、ちょうど待ち合わせ時間の五分前で。

『もしかして、神威、去年も五分前にきてた？』

「そりゃ、好きなコとの待ち合わせだもん」

こういうことをいけしゃあしゃあと言ってのけるのが神威という人間だ。この一年で慣れたとはいえ、ちょっとまだ恥ずい。

「絶対俺の片想いだと思ってたから。あん時の返事はびっくりしたなー」

『私だって』

臆することなく手を繋ぐ。

「…今年も一緒にいられて、よかった」

思い出す。私が彼にした返事。
神威は、それを私にして見せた。
＿＿神威の唇が私の頬に触れる。

『私も、よかった』

人前でやめてよ、というと、彼は笑った。

もう二度と失うことがないように。
私と神威はしっかりと一歩を踏み出した。

＿＿オウセ終＿＿